【吉岡秀隆版金田一耕助】
(2019年・日本・118分・NHK BSプレミアム)
脚本:喜安浩平/吉田照幸
演出:吉田照幸
原作:横溝正史『八つ墓村』
吉岡秀隆版金田一の存在を知らなかった。しかも本作が2作目で、2018年の『悪魔が来りて笛を吹く』で初めての金田一役。2023年には『犬神家の一族』を撮っている。
因みに、吉岡秀隆の映画レビューは、野村芳太郎監督の映画『八つ墓村(1977年)』に於ける主人公・寺田辰弥の少年時代役だそうだ。
吉岡秀隆の金田一耕助は、一体どんなだろう?と興味を持ったのだったが、私の想像とは真逆の人物像で驚いた。「Dr.コト―」の時の穏やかさはなく、時折見せる目付きの鋭さが意外だった。金田一はいつも遅れてやって来るイメージだが、鍾乳洞の中で真犯人に「見つかりましたか…探し物は…?」と背後から声をかけ、笑顔から急に厳しい顔つきになった時は、何だか怖かった。
ウィキペディアによると、原作を構成する各要素を多く取り入れるために、本作では各々の扱いを短くしているそうだ。なので、前置きもなく磯川警部(小市慢太郎)がすでに村に来ていたりするし、弁護士事務所で辰弥の火傷の痕を確認するシーンの映像はない。
先日来、『八つ墓村』(本作含めて4作)を立て続けに観て来た。あらすじは概ね同じだったが、この吉岡版は一番クセが強いと思う。
中でも森美也子(真木よう子)の描き方に違和感を感じた。この美也子は、辰弥(村上虹郎)の背中にある火傷の痕を舌で舐めるのだ。他のシーンでも美也子の辰弥に対する色仕掛けのシーンがあり、こういうキャラを演じさせるために真木よう子を配役したのか…随分、彼女の胸を強調するような撮り方をしていて、NHKらしくない。(美也子のキャラの改悪)
また、辰弥と実の父との対面シーンがあるのも異例だった。
本作全体でいえば、これまで描かれ続けて来た落ち武者の祟りや村の因習、鍾乳洞に隠された秘密などの要素は小道具の扱いで、「愛」や「金欲」の要素を前面に出したのは、現代風ということだろうか。
端折られた部分が多く、その分、テンポはよくなったかも知れないが、味気ないただのミステリー&サスペンスになってしまった気がする。
言いたい放題の感想の序でに続けると、木内みどりが演じる濃茶の尼は、全然不気味さが無かった。辰弥の腹違いの姉・春代(蓮佛美沙子)は、この役には見た目が若すぎて、運命に耐える女性の哀しさがなかった。田治見要蔵と久弥の二役を演じた音尾琢真は、何だか狂気の深みが足りなかった。(安田顕の方が適任かも)
映像化作品では省略されがちな里村典子(佐藤玲)が本作では登場する。原作未読の為、典子という人物のキャラが分からないのだけれど、第一印象では“不思議ちゃん”だったのが、次第に「賢いの、賢くないの?どっち?」という風に印象が変わっていった。ラストでは、大きくて重たそうな荷物を引きずって辰弥の乗る列車に乗り込むのが、押しかけ女房のようだった。あの荷物の中身については言及されなかったけれど、想像はつく。
さんざん文句をつけた後なので気が引けるけれど、『八つ墓村』の4作品見比べの総括としては、誰が金田一耕助を演じても「物語自体」は面白いという結論。(笑)
原作者の横溝自身が「金田一は狂言回しだ」と言っているし、横溝作品を多く手掛けて来た市川崑は、「金田一というのは、そんなに心理的に綾(あや)を成して作り込む役ではない」と言っている。
原作の持つ力が大きいワケだけれど、それでも物語(映像)に独特の雰囲気や味わいを持たせるのは金田一耕助の役目だと思うので、やはり映画版の石坂浩二とドラマ版の古谷一行が醸し出す雰囲気が一番しっくり来ると私は思っている。
横溝正史原作の映画化作品には未見のものもあるので、おいおいに観て楽しみたいと思う。