ひば

リリントン・プレイス エヴァンス事件のひばのレビュー・感想・評価

4.0
具合悪くなった。イギリスの死刑制度廃止の発端となった事件なんですが、人を判断するにはその人の歴史がつまりは痕跡とそれに値する因果がないと善悪はつかないわけで、地表に出た一端の地下は特にわからない。それが心底恐ろしい。衝動かすらもわからない。どうしてこんなことをするのかが不明瞭過ぎる(一応嗜好やコンプレックスを感じないこともないがそれでも)。人は通じ合わない物事を忌避しながらそれでも自ら支配環境に身を投げ点を繋ぎ合わせ自分を安心納得させようともする。そういうシステムを把握しているようだ。
この人、訪問者が来たら飼犬を抱えて迎えるけど出てった瞬間ボトッと落とすのね。そういうのすごい怖い。自分のカラーリングを制御してて、かつコミュニティの綻びを他者へと誘導し蓄積してる。だからその人自身が何も見えないしいつの間に外部に紛れ透明になる。当時の戦時前後の風潮あってこそ起きてしまった事件かもしれないが、時代の節目を日々強く感じる今だからこそ悪意の化身の存在を身近に感じ恐怖を擦り付けてくる。こういった問題から逃げず向き合い続ければ、善は後退することはないかもしれない、しかし本当にそうだろうかと、気を遠くにやってしまう。この突然変異のような悪魔に打ち勝つための土台はどうなる。死刑制度には反対だが人の死に値する処罰から人権という薄いガラスが守るにも限界があるんじゃないかと、たまにそう思ってしまうときがある
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