YasujiOshiba

エールのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

エール(2020年製作のドラマ)
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コヴィッド19の影響を受けた朝ドラとして記憶に残る。志村けんが放映前に亡くなってしまったし、4月からの撮影が中断し、放送も途中で最初からの再放送となってしまう。

そして気がつけばオリンピック2020は延期となり、NHKの当初の思惑からは外れたのだけれど、ぼくとしては結果的にむしろそれでよかったんじゃないかと思うほど、印象的な出来栄え。ほんとうに大変な一年の記憶となる作品になった。

歌がよい。明治から平成までを生きた古関裕而(こせきゆうじ、1909-1989年)の功績とともに、いろんな歌を教えてもらえた。そうか、あの歌も、あの曲も、というのがどんどん出てきた。そして歌とともにある時代をふりかえる絶好の機会になった。戦前から戦後という時代、戦時歌謡という歌のあり方を、今一度考える良い機会になったのではないだろうか。

とりわけ、「予科練の歌(若鷲の歌)」(1943)をインパール作戦(1944)につなげてゆく演出はよい。多少史実にないことを盛り込んではいる。Wikiによると、古関は後方のラングーンに滞在し前線取材には行っておらず、 森山直太朗の演じる恩師の戦死もフィクションとのこと。それはそれで、歴史への扉を開くきっかけとなればよいのだと思う。

そして窪田正孝と二階堂ふみのコンビが見事。二階堂なんてオーデションからの参加という気合の入りっぷりで、紅白の司会まで射止めちゃったんだけど、この人はほんと、『ヒミズ』(2011)のときから根性あるなと思ってたんだけど、その根性くささがだんだん抜けて、最近では風格さえ出てきたような気がする。

ラストもよかったね。音の最期を暗示しながら翌日の最終回のNHKホールの「古関裕而/エール歌謡ショー」へとつなげてゆく展開。歌からさまざまな思いが複層的に浮かび上がってきましたな。
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