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トゥー・オールド・トゥー・ダイ・ヤングのrollinのレビュー・感想・評価

5.0
This is some Kamikaze shit.
〈この殺しは命懸けだ〉

氾濫する光と図形がもたらす広告的訴求力。一点透視のレイヤーワーク。あらゆるカットがグラフィカルで冗長で贅沢。ショーウィンドウに飾られたマネキンが息を吹き返すように、彼らは物語を紡ぎ始める。
時間の枷から少しだけ解き放たれたレフン監督の遊びの部分が楽しめるドラマ。また、そのゆとりはエドワード・ホッパー的な静寂と孤独の空間表現も可能にした。

となると、当然の如くリンチ監督の創作性ともバッティングする訳で、深く瞑想を促すような両者の作家性の違いに思索を巡らせる時間は至福。

物語はぶっちゃけGTAのおつかいミッション、もしくはLAノワールなんだけれど、主人公が裁いていく悪党の罪状が、そのまま彼の沙汰に重なるという構造、ボランティア感覚で殺しまくる主人公の空っぽ感がヤバい。オフホワイトorボーダーラインどころじゃない。
今作はかなり西部劇を意識していて、何ならジョジョ第3部でもある。イーストウッドのつばの吐き方を完コピしたマイルズ・テラー。顔面がめちゃくちゃ良い。この人は毎回その作品に出演する為だけに生まれて来たような必然性を感じさせる。第2のゴズリング爆誕である。

マーティンとヘスス。それぞれに手を差し伸べる代理父の対比。契りの強度で既に勝敗は決している。
マグダラのマリア、メキシコのJesus、ガルシアの首系カルテルの側に神の正義を授ける設定にシビれた。聖母という名のネオン・デーモンズに翻弄されていく男たち。ホドロフスキー爺譲りのタロットのモチーフ。コカインによる洗礼。赤い靴底。インスピレーションの奔流。10パターンのタイトルバックと最高にクールなエンドクレジット。クリフ・マルティネスのサントラと映像の親和性は言わずもがな。

特にお気に入りのキャラは、鷹の目を持つ元FBIのウィンチェスター使いヴィゴ(スリー・ビルボードの元亭主か!)。インテリヤクザ小島秀夫(DEATH STRANDING予約しましたよ!)。裏ポルノ撮影係のくそエイム天パ野郎リトル・ビリー。ネル・タイガー・フリー(GOTのミアセラ)は名前だけで正義。

5話のポルノ製作現場潜入からの顔面ドアップ&モタモタカーチェイス、7話のフラッシュ(バック)ダンス&両手バッサー!シーンは、レフン史に残る名場面。タイヤ工場で札束を留める輪ゴムをやらん!って言うくだらなさも良い。「今のアホはエセ警官だと言ってくれ」

落とし所はやっぱレフンだなぁってなるけど、ヴィゴの物語と考えれば今作はハッピーな部類なのかもしれません。

Amazon Studioは着実に映画とドラマで良い仕事をしていて、NETFLIXオワコン化説はいよいよ信憑性を帯びて来た。今作は成人指定だけど、ティーンエイジャーたち、何とかして10代のうちに観て、浴びるように影響を受けちまいな!
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