警察庁捜査第二課による、外務省ノンキャリア役人の汚職事件、通称サンズイに関わる捜査をノンフィクションで描いた骨太の作品。
捜査課内での軋轢、過剰な取り調べ、汚職事件の立件の難しさ、政治的資金の裏と表の動き、キャリアとノンキャリアとの格差、出世のための迎合、下請け会社との癒着など、無骨に描き出している。
戦後生まれの昔ながらの刑事が荒っぽく仕事をする最中、若い刑事たちも腐らずに食らいつき、能力を飛躍させていく様は現在では許されざる世界観だ。
事なかれ主義と組織のプライドと利権を守るために横のつながりで情報を漏らし、操作し、職務を妨害する上層部。
事件自体を握り潰すことや塩漬けという反発を起こさせないようになにもさせない、しない動きなど、常套手段と化しているのだろう。
理不尽と感じても本来の罪を明るみにすることも裁くこともできないのは歯痒さを覚えるだろう。
どんなにいいサービスや製品なども提案しても、クライアントの一担当者で握り潰したりと環境維持バイアスと呼ばれる変化をさせたくない人間の圧力に屈することなど社会人になれば洗礼を受けることもあるだろう。
そんなときでも腐らずにできることを既存のやり方の枠を超えて、前例がなかろうと情熱を持って推進できるか、恐れずにやり遂げようと意思を持てる人間になれるか。
自分の仕事への姿勢を正そうと思えるとても良い作品でした。