ジェイコブ

そして、生きるのジェイコブのネタバレレビュー・内容・結末

そして、生きる(2019年製作のドラマ)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

生田瞳子は幼い頃に両親を交通事故で亡くし、理髪店を営む伯父の和孝に育てられた。2011年。大人になり、盛岡のローカルアイドルとして活動する瞳子はかねてから夢であった女優になる夢を叶えるため、東京へ向かおうとしていた。同じ頃、東京の裕福な家庭で育った清水清隆は、就職活動の時期が迫る中、自分の進みたい道を定められずにいた。そんな二人の運命は、2011年3月11日東日本大震災の発生によって、大きく動き出す……。
岡田恵和脚本、有村架純主演の連続ドラマW。日本を襲った未曾有の災害が、出会うはずのなかった瞳子と清隆を出会わせたことで、それまで緩やかに動いていた二人の運命の歯車が大きく動き出していく。
本作の裏テーマとして、「善意は時として真逆の結果をもたらす」がある。志を抱いてフィリピンで支援活動に勤しむ清隆が、自分の何気ない一言がきっかけで、現地の貧しい少年ジャスティンを悪の道に進ませてしまったように。また、岡山天音じる久保真二も、社長の善意によって拾ってもらうも、やがて会社ぐるみの詐欺に加担させられるようになってしまった。初めは天真爛漫に人を笑わせていた久保から笑顔が消えていく様子は見ていて辛くなるものがある。
人の感情の機微を描くに長けた岡田恵和氏の作る巧みで一筋縄ではいかない人間模様が、非常に見応えのあるドラマ性を演出している。ただ、ご都合主義のように見受けられた点が一つ。それは、清隆を探しに国立へ訪れた瞳子が、たまたま入ったカフェの窓から清隆を見つけるというシーン。国立に土地勘のない瞳子が、一日で清隆を見つけ出したとするのは少し無理がある。せめて姉やハンから手がかりをもらうとか、何日もかけて歩き回り、疲れ果てて行き着いた店で見つけたなどの過程が描かれていないと、視聴者には都合良く映ってしまうだろう。
その点を除けば、震災をきっかけに自らの人生を見つめ直し、生きるとは何か? 善意とは何かを問う上質な人間ドラマである。