あまね

コールドケース ~真実の扉~のあまねのネタバレレビュー・内容・結末

コールドケース ~真実の扉~(2016年製作のドラマ)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

海外の大ヒットドラマ「コールドケース」の日本版。
美人で切れ者の女性刑事が、未解決事件を解き明かしていく。
謎解きよりも、時間に埋もれた事件の中に隠された人間ドラマが大きな見どころだ。

海外版のリメイクーーなるほど、雰囲気が今までの日本の刑事ドラマとはだいぶ異なっていた。
日本のドラマのようなアナログ感、ドタバタ感といったものが少なく、とても綺麗に組み立てられている印象だ。
あまりにも綺麗に組み立てられていたので、正直言って、第一印象は弱かった。
澱みなく綺麗で、どこかバーの片隅で無音で流されている洒落た映画のよう。静かな水槽を見るような気持ちで、画面を見てしまう。
これは物足りないなと思ったのだが、回を重ねるごとに、その印象は良い意味で覆っていった。
静謐な印象だった物語は、やがて静かながらも心に重く響き始め、感情を波立たせていく。
気が付けば夢中で物語を追っていた。

オリジナルの海外版では事件当時に流行した音楽を背景に流しているそうだが、日本版もそこは踏襲していた。
これがとても良い。
懐かしい音楽は「事件」が「過去」であることを雄弁に語り、見ているこちらの時間を巻き戻す。
見事にこの演出にハマった。

取り扱われる事件は、皆、背景に人の心を隠している。
それが故の「未解決」となっている。
そのため、謎を解くということは、人の心を解き明かしていくことに他ならない。
必然的に物語は重く、胸に響くものになっていく。
正直に言ってしまえば、これが未解決になるのか? さすがに無理があるんじゃないかと思えるような事件もある。
これを見逃しているなんて、警察はちゃんと捜査してないだろうとつっこみたくなってしまうような場面もある。
ただ、それは恐らく「今」だからそう思うのだろう。

謎解き自体はあっさりしていた。
基本的に、一本道なのだ。
少しずつ情報が集まり、それが一つに繋がり、大きくなっていく。
ミスリードはない。
そのため、ともすれば淡々とあらすじを見せられている気分になることも。そこが少し惜しいと感じた。

日本の従来の刑事ドラマとだいぶ違うなと感じたのは、ヒロインの女性刑事の立ち位置だ。
見慣れた刑事ドラマだと、チームから浮いていたり、破天荒であったり、尖り過ぎていたりと、どこか”周囲と違う”色を演出されることが多い。
けれど、このヒロインはそういった意味で目立つことは無い。
素晴らしく優秀ではあるが、だからそれがどうしたと言わんばかりに、周囲は普通に接している。
海外版のリメイクと聞いて、納得した。

また、「チーム」の描き方もだいぶ違っている印象だった。
日本のドラマと比較して良い悪いと語る部分ではなく、とにかく「違う」。
非情にシステマティックで、綺麗に整えられている「チーム」だ。
どこかアットホームでところどころはみ出したりほころびたりするところに人情を感じるような、日本的なチームとは雰囲気が違っている。

違うといえば、重要な役どころを担う犯人も、いかにも海外的だった。
幼少期にトラウマを負った、サイコパス。
海外版ではよく出てくるタイプの犯人が、この物語でも出てきた。
国内のドラマで見ると、なかなか異質だなと思う。
犯人役の役者さんの演技が見事で、とても面白かった。

海外ドラマのリメイク版と聞いて、随所に頷く場所が散りばめられている。
けれど、海外版の真似にはなっていない。
これは間違いなく日本の歴史を折りこんだドラマだ。
なかなか重いので気軽には勧められないが、私はとても面白いと感じた。
ぜひ、2も見たい。
あまね

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