うっちー

マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~のうっちーのレビュー・感想・評価

4.5
 K-POPを視聴していて偶然ヒットした主題歌の映像から惹かれてまずは配信で、後にディスクをほぼ一気に借りてあっという間に鑑賞終了。重くシリアスながら、ユーモラスでハートフル、なにより感動的なドラマだ。長い尺をフルに活かした細やかな心理描写が、じわりじわりと観るものを取り込んでゆく。

 まず、ヒロインのイ・ジアンを演じるIUの存在感が凄い。捨てられた犬のような、尋常でない悲壮さが滲み出た出で立ちと表情。何かがちがう、彼女に何があったんだろうと思わせる。彼女の表情や仕草、行動から目が離せなくなる。
 そんな彼女が、いつしか気になって仕方がなくなるドンフンは、一流建築会社な部長で、構造エンジニア。寡黙で真面目、会社でも家庭でも穏やかで、敵のいない人物だが、どこか寂しげで、覇気のない人物。人知れず虚しさを抱えたような気配が漂う。

 ジアンとドンフン、親子に近いくらい歳の離れたふたりの、恋愛とも友情とも異なる、不思議な結びつきを軸に、韓国の大企業内での熾烈な勢力争いやそれが引き起こす犯罪、貧困と暴力に蝕まれたジアンの不幸な生い立ちなどがクライム〜サスペンス的に語られてゆく。とってもハートフルなのに、サスペンス描写はドキドキハラハラするという二重構造もうまく、ただの現代の大人の童話、に終わらない苦い後味を残す。また、ふたりの周りの人々の描写も時に楽しく、時に悲しく、観るものを楽しませてくれる。正直、言うことなし。

 憎まれ役、悪役たちも魅力的なのだ。ドンフンを会社から追い出そうとする、彼の後輩で若くして社長になったト・ジュニャン。冷徹でヤな奴を演じる役者さんは、冷たさにピッタリのクールなハンサムで、往年の中華系俳優、ジョン・ローンを彷彿とさせる。また、シアンを執拗に追い詰め、暴力も厭わないジュチョルを演じる俳優さんのカッコいいことよ。切れ長のクールな顔に呆れるほど長い足。酷い仕打ち
の裏の切ない因縁も明かされる。
 辛い話の合間に挟まれるドンフンの兄と弟との深〜い絆と愛くるしいいちゃつきの、癒しパワーたるや。パク・ホサン、ソン・セビョクがそれぞれ持ち味を生かした好演をみせている。
 弁護士で、ドンフンの苦悩の元になる妻のイ・ジアも、したたかで美しくて、辛い役どころながら所々共感できてしまうさりげない熱演。
 
 と、枚挙にいとまがないくらい、数々の俳優たちの名演が記憶に残るが、やはりドンフンとジアンの電車内でのシーンや、連れ立って歩く夜道のシーンの静かな光景と、さりげない台詞の温かみは、一生記憶に残るだろう。一見全く交わらない人物たち。交わらない線が交差してからの変化。心の動きと動揺。『ミセン』のスタッフならではの、張り詰めた中での細やかな描写を、心ゆくまで堪能できます。

 賄賂送りつけ事件から、パク常務への罠、スキャンダル狙いの盗聴と外部も絡んでの脅迫など、回を追うごとに複雑になるクライム展開が、最後にはこんがらがって、「あれ、なんでこいつ脅迫され始めたんだっけ?」と多少混乱するかも。でもそんなことどうでもよくなるほど感動するラスト。イ・ソンギュンが絶対好きになるドラマ。

※特別出演的なパク・ヘジュンがよい! 僧侶姿でもイケメンです。