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ロンサム・ダブのrollinのレビュー・感想・評価

ロンサム・ダブ(1989年製作のドラマ)
5.0
「そこが目的地だからだ」

(Filmarks運営の方々のご尽力に感謝します!)


ロンサム・ダブ。
メキシコ国境に程近いテキサスの田舎町で、今は穏やかに暮らす二人の男—— かつてテキサス騎馬警ら隊で活躍したオーガスタス・マックリー/通称ガス(ロバート・デュヴァル)と、ウッドロウ・F・コール(トミー・リー・ジョーンズ)その人だ。
そんなある日、かつての仲間、ジェイク・スプーン(ロバート・ユーリック)が現れ、遠くモンタナの地の素晴らしさを彼らに伝える。今甦るフロンティア・スピリッツ。ぼ、牧場やりてぇ‥!そしてガスは口をすぼめながら自らに問うのだった。「いつ行くの?」と。

老兵はたたでは死なず。
監督は『フリー・ウィリー』のサイモン・ウィンサー。ピューリッツァー賞を受賞したラリー・マクマートリーの原作をTVドラマ化した、西部劇史上屈指の大河ロマン。観よ男たちよロンサム・ダブを!これを観ずして死んではいけない!

ロバート・デュヴァル!
トミー・リー・ジョーンズ!
ダイアン・レイン!
ダニー・グローヴァー!
アンジェリカ・ヒューストン!
スティーヴ・ブシェミ!
クリス・クーパー!

自信家で皮肉屋のガスと、無骨で無愛想なウッドロウのコンビ。そんな父親たちの背中を見て育ったニュート。アイリッシュ末弟のヌママム死。ならず者としての生き方を通したジェイクの切なさと、愛に翻弄されるロリーナ。ロリーナへの一途な愛を貫くディッシュと、誰よりもやさしいジョシュア。不貞の妻への失念と己の無力さに打ちひしがれながらも、再び歩き出すジュライ保安官。包容力と養育能力がハンパないクララ。そして最期まで天晴れな極悪先住民ブルー・ダック。

名優たちが画面狭しと立ち回る名演名シーンの数々。過酷で壮大なキャトル・ドライブの旅。雪崩れ込む馬の奔流。そして友情を超え、魂で繋がった男たちの生き様。報われなかった愛。
荒野とは過程だ。宛てのあるにせよないにせよ、それは旅の通過点だ。男たちは旅立つ。ただ荒野である状態を目指して。

ロンサム・ダブのあばら屋に飾られたイエローボーイ、ヘンリーライフルといった真鍮長筒群。ガスとウッドロウがあくまで南北戦争以前のコルトウォーカーやコルトアーミーに拘る様子は、彼らが越えて来たいくつもの死線と愛銃への信頼を感じさせます。
特に記憶に残る大好きなシーンは、ニュートに手を出した陸軍将校をウッドロウがしばき回すところ。馬を愛するトミー・リー・ジョーンズの手綱捌きと乗馬姿は本当にめちゃカッコいい!
あとは『バスターのバラード』でオマージュされた、ガスVSブルー・ダックの仲間が荒野で腕を探り合うロングレンジの籠穴戦。相手側のテレスコ付シャープスライフルへの絶大な信頼を叩き潰すガスの熟練の技。照準器を立ち上げる姿が最高にシビれる名シーンですね。

この作品が描くのは、来たる希望に満ちた西部の暮らしではない。むしろ無常で無慈悲な死のバリエーションだ。それはいくつもの人生の凝縮。ある者は無念の死を遂げ、ある者は全く予期せぬままその生涯を終える。こんなはずじゃなかっただろ?と歴史が問い詰める。
少年に馬を、女たちに言葉を、そして男たちに荒野を。残された者と我々観客は、ただ彼らの旅を、無言の青春を胸に刻むだけでいい。こんな風にダラダラと語る必要はない。


とにかくロンサム・ダブがFilmarksにラインナップされたことを感謝します!この壮大なウエスタン・オデュッセイアが、これからも永く、多くの人に愛されますように。
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