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ペルソナ -仮面の下の素顔-のKimonoのレビュー・感想・評価

ペルソナ -仮面の下の素顔-(2019年製作のドラマ)
5.0
韓国映画とは思えないほど叙情的で美しい映画。

四つの短編により構成されている映画で、全てイジウンが主人公を演じている。韓国作品は、役者と映像の質が非常に高いため、それらに頼りきりになってしまう事が多々ある。しかし、この作品は、場面構成の工夫や台詞、台詞の間の表情の工夫を重点的に行った結果、自然でリアルな映画になったと考えられる。韓国映画には珍しく、とても叙情的で美しく、それでもって芸術的だ。韓国でこういった映画が増えていくことを願うばかりだ。

1 ラブセット

テニスの試合を通じて、少女を含む女性の肉体美や男女の肉体的な交わりを表現した作品。途中、イジウンが膝を怪我して、血がくるぶしまでつたっている映像が出てくるが、少女の破瓜を表現している。少女が大人の女性となっていく瞬間に放たれる魅力を、スポーツの試合を通じて表現している。着眼点が鋭く、卑猥なテーマも芸術になってしまった。

2 コレクター

若い女に心を奪われた中年男性の目線で物語が進んでいく。家族として愛を感じられる女性を捨て、イジウン演じる、若い女にどんどん深入りしていく中年男性。深入りしてしまう中年男性とは真逆に、若い女は他の男と平気でキスをし、いきなり連絡を経って旅行に行ってしまったりするのだ。

だけど、彼女は、「あなたは遊び相手なのよ」という言葉は一切言わない。それどころか、寝ることすらしないのだ。

そして、

「あなた、ダサいのよ。カッコいいところをみせてよ。あなたの気持ちをとりだして私に見せて」

と言う。

これまた絶妙な台詞だ。完全に拒絶しないことで、骨抜きにされた男の心臓=血を吐くような悶えるほどの気持ちをコレクトするイジウン。これは鳥肌。

3 キスの罪

若い時は、異性と接触した事自体が特別で神聖なものと化してしまうものだ。親に悪戯をするほどあどけないのにも関わらず、キスマークを自分の手に作ってみたり、未成年なのにタバコを吸ってみたり、背伸びをして大人に近づこうとする少女たちの様子は、現実にありそうなほどリアル。

4 夜の散歩

非常に叙情的で大絶賛したい映画。
作品としてはよくある設定で、恋人の夢の中で生前の思い出を語りながら散歩するだけの映画。しかし、白黒の美しい映像や木々のざわめき音が、映画を美しく幻想的なものにしていた。

イジウン演じる主人公は、自殺か事故で亡くなった若い女性。病気で亡くなった姉が生に執着していたことを彼女は格好悪いと思っていたが、結局人間は生きたい気持ちからは逃れられない事を、夢に出てきてまで、生前の恋人と会う姿を描く事で表現していた。最後、その恋人と夢の中でキスをしている時の引きの画面の左側に、黒い人影が映っていた。あれは一体誰なのか。

イジウンという役者は、本業が歌手だとは思えないほど表現力が豊かだ。

カンヌ映画でも通用するほど、叙情的な演技がとても上手い。一つ残念なのは、彼女のお顔が、賞レースの映画向きではないということと、表現の幅が狭いということくらいではないだろうか。イジウンがカンヌ映画に出てても誰も驚かないと思う。それくらい彼女は凄い。