岡田拓朗

火花の岡田拓朗のレビュー・感想・評価

火花(2016年製作のドラマ)
4.8
ドラマ火花を一気見で鑑賞。
最後の漫才でボロ泣き。
漫才師を目指したことないから普通ならその人たちの生活はわからないはずなのに、今作はその漫才の世界の現実を突き詰めているような感じがして、感情移入しまくれた。
脚本、演出はさることながら、キャスティングとキャストの演技も最高すぎる。(もちろん又吉の原作ありきなのは間違いない。)

さらに今作の見どころは、どこまでも自らのおもしろい漫才を突き詰めていこうとすればするほどに、現実の多数派のお客さんとズレが生まれて、自らの漫才と世間の求めている漫才にギャップが生まれて、どちらを選択するか、どう折り合いをつけていくのか、の葛藤、さらには理想と現実のギャップに悩まされ、苦しむ姿やそんな状態の人間そのものがリアルに描かれているところだと思う。

お笑いや漫才に対しての信念が強ければ強いほど、世間一般のおもしろいと折り合いをつけることができずに、チャンスを逃してしまう場面が多々あるし、それが続くことで誤った方向に舵を切ろうとしてしまうシーンもある。

さらに後輩や弟子と可愛がってた人たちの方が、いわゆる売れっ子状態になっていくときのもやもやした感情までもがしっかりと描かれていて、約450分で漫才師の生活の一端を体験できた感じがした。

そして、あほんだらの漫才、やり方を見ているうちに思い浮かんだのはM-1決勝のジャルジャルの漫才だった。
そもそも決勝にいける時点ですごいわけやけど、彼らなりには本当はもっと振り切った漫才がしたいんじゃないか、とどうしても思ってしまう。
そう考えると、M-1のときみたく、世間のおもしろいと自らの追求するおもしろいをあれだけ折り合いをつけながら、さらっとやってのけるのはさらにすごいことなんだなと感心した。

売れたいと思いながら漫才をしていたスパークスも売れてくることによって、世間のおもしろいと自らが追求したいおもしろいの間の葛藤に悩まされる。
また、有名になっていけばいくほど、夢や理想が大きくなっていき(更新されていき)、良くも悪くも初心を忘れていき、コンビ間でも歪みが生まれるようになっていく。
そして、自分たちのやりたかった漫才がわからなくなる悪循環に陥っていく。
決して簡単なサクセスストーリーを描くのではなく、リアルな人間臭さを感じられる緻密な構成に感動が止まらなかった。
漫才の掛け合いやネタ合わせの部分もしっかり見れて大満足。

最後、徳永と神谷が結局コンビを組まずに終わった感じもよかったし、誰よりも自由に楽しそうに生きていた神谷の弱さが終盤になるにつれて露わになっていく展開もすごくよかった。

さらにキャスティングとキャストの演技が素晴らしすぎた。
林遣都、波岡一喜、門脇麦、高橋メアリージュン、田口トモロヲ、好井まさお、とろサーモン村田など…。
林遣都、波岡一喜は、まるで漫才師の彼らの状況を俳優に置き換えたような感じだし、好井まさお、とろサーモン村田なんかは、役とまさに同じような状況下なんじゃないかと思われる。
門脇麦、高橋メアリージュンもハマりすぎてた。

漫才に違和感もなかったし、コンビ間のやりとりなんかもあそこまで自然なのは本当にすごかったし、だからこそ体験したくらいに作品にのめり込めた。

ドラマを観ると、映画版のキャスティングは明らかにハマっていない気がしてならない。
菅田将暉、桐谷健太、木村文乃は、今を輝きすぎていて(キラキラしすぎていて)、内容とどうしても合わない気がするのと、高橋メアリージュンの役がないことに驚き。
逆に映画がどんな作品なのか気になるので、DVD出たら観てみようとは思います。
岡田拓朗

岡田拓朗