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火花のgのネタバレレビュー・内容・結末

火花(2016年製作のドラマ)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

なんだこれ、めっちゃいいやん。
原作は発売当時に読んだ覚えがあるけど、又吉で脳内再生されすぎて、あと話題作として扱われすぎて、あんまり記憶に残ってなかった。そこまで大きく衝撃を受けた覚えもないし、映画も見なかった。ドラマもそこまで期待していなかった。

別の良さがあるんだろうけど、これ、映像になった方がいいな。
もちろん、映像化の質とセンスがめちゃくちゃ良いのが大要因だけど。漫才の感じとか、生の喋りで感じれるテンポがあるのも大きい。
あと、高円寺とか吉祥寺とか、中央線沿いで飲んだくれて燻って、不安と隣り合わせで夢追いかけてる若者の刹那的な空気みたいの、やっぱ、映像として、場所の空気感とか感じれた方がめちゃくちゃ伝わる。んでそれがめちゃくちゃよい。本当にいい。

アメリカでいうニューヨークで安アパート借りてみたいな感じなんだろうか、ララランドでハリウッドに来るみたいのも近い、そういう、「夢追い人」の表現様式みたいのって、日本だと、完全に中央線沿いだと思ってる笑 個人的に。
んで、その、東京で夢を追ってる若者、の空気感とか焦燥感、苦しみと輝きと、泥々と透明感とみたいなのを、もう、すごい伝わる。
そういう若者ってけっこうステレオタイプ化してて色々な映画とかで描かれてる気がするけど、俺の中では、現時点でこれが完全1位になった。

色々よさはあるんだけど、やっぱり一番には、作品を生み出した人の強烈な生の体験だっていうのが強いと思う。
うそじゃないし、ああ、こういう日々を愛してたんだなっていうのが伝わってくる。
それからキャラクターに関しても。
神谷みたいな先輩がいたのかなとか、欲しかったのかなとか、すごく尊敬してたんだろうなとか、お笑いを愛してるんだろうなとか、芸人を愛してるんだろうなとか、多分、文字だと強すぎた感情が、映像化においてスタッフや演者を通して、映像という表現に置き換えられることによって、ああ、こういうことだったんだねって、伝わった感じだった。

あとお笑いの質?がめちゃくちゃ高いのやっぱ良いなと思った。実際お笑い芸人使いまくったり、ライブのシーンとかも普通にネタとして観れる。
芸人の生活みたいのもめちゃくちゃ生っぽいし。当たり前だけど、歩きながらネタを口ずさみ続けるとか、小さいツッコミとか、漫才みたいになる会話とか、「芸人の日常」のディテールが圧倒的に本物。

それからこのへんは難しいけど神谷さんってキャラがおもろすぎる。笑
正直やってる笑いのセンスとかは難しくてわからん。笑笑
いや奇行やんみたいのもめっちゃあるし、太鼓の太鼓のお兄さんの演出とかは、そのあと2人で道ではしゃぎまくるとことかうーーーんってなったり、ホントに文学というか、俺にしかわからんこの人の良さ、みたいなとこもあって。
でもそこのわからん状態をおそらく伝わらないだろうなってまま描ききってる感じが、良いなって思ったり、少しクセ強く感じたり。笑
けどやっぱりすごいキャラだな、良いキャラだなと思う。冒頭のライブとか大きいシーンよりも、ディテールで思うこと多いかも。
別れ際にぜんぜん、ぜんぜんとか、目上の人に親切されたらめちゃ腰低いのとかね。

芸人じゃなくても、創作している人ならハッとさせられるような言葉、後押しされるような言葉を神谷がたくさんいう。

気持ちほとんど言葉にせず、徳永の気持ちを行間や空気でたっぷり語る演出が多くて。そういう文学としてのセンスもめっちゃ渋いし、それを信頼としてそのまま映像にするっていうのもまたカッコいいわって感じだった。
難解に感じるところも多々あるけど、そのぶん、解釈を委ねられる余地がある。
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