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盤上の向日葵のkoyaのレビュー・感想・評価

盤上の向日葵(2019年製作のドラマ)
5.0
将棋や囲碁の映画やドラマで大事なのは、指先。
駒や石を打つ瞬間の指。
それが美しくないと説得力がありません。

この将棋のドラマはまず、主役の将棋の天才、千葉雄大の指先が爪が美しい。

そして将棋とは何か、囲碁とは何かという説明もうまくなくてはなりません。

このNHKドラマは全4回という短さではありますが、無駄がない。
視聴者への媚びなどなく厳格で、真剣。
まさにこのドラマで描かれる将棋と言っても、金を賭ける将棋、そしてさらには命を賭けた真剣と呼ばれる将棋を描きます。

同時に進行するのはある殺人事件。
3年前の白骨死体が発見され、高級な将棋の駒を抱いている。
その謎を追いかける2人の刑事。

主役の千葉雄大は不幸な子供時代から、将棋の才能を見出されるけれどそれに乗る事は許されず、自力で這い上がっていく。
そして出会う真剣師、竹中直人。

キャスティングにも無駄がなく余計な忖度など一切ないのがNHKならではで観ていて潔い。

松本清張の社会派小説のような骨太さ、将棋という世界の繊細さ、因果応報絡み合い先が読めない展開を描き切った脚本のすばらしさ。

千葉雄大は映画『帝一の國』でも将棋が得意な高校生を演じていたけれど、将棋という頭脳戦が千葉雄大にはよく似合う。
そして、迫力の演技で迫ってくる竹中直人。

嬉しい、楽しい、愉快、かわいい......そんな世界を否定する訳ではないけれど、それだけではなく真剣になる事の大切さと難しさを見事に描き切っていて、素晴らしいドラマ。

こんないいドラマを観ると、もう民放のドラマがしばらく観られない。
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