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サギデカのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

サギデカ(2019年製作のドラマ)
4.7
捜査二課・知能犯担当の今宮(木村文乃)はがむしゃらかつ綿密な捜査を重ね、バイクを駆って犯人をどこまでも追い詰めていくような女性刑事。その内偵が功を奏し、同僚の森安(眞島秀和)らは振込め詐欺のアジトに突入、実行犯“かけ子”達の逮捕に成功する。しかし彼らも組織の末端に過ぎず、大金を手にする上層部の事を何も知らない。係長の手塚(遠藤憲一)は今宮に、かけ子の加地(高杉真宙)を釈放して泳がせる事を提案。彼が上と接触するのを狙う“突き上げ捜査”だ。それは今宮と加地の長い駆け引きの始まりだった… 
そんな折、今宮の祖母・しのぶ(香川京子)が切り盛りする店に、著名な起業家・廻谷(青木崇高)が通うようになる。まるで境遇の違う今宮と廻谷だが不思議と意気投合し、お互いにとって憩いのひと時となるのだった。
「地面師詐欺」「投資詐欺」―― 今日的な事案にも向き合いながら、振り込め詐欺捜査に突き進む今宮だが、やがてさまざまなジレンマに直面する。「僕らは経済的強者である老人から金を獲り、社会に役立てている」と主張する加地。被害に遭うばかりでなく、時に共犯者に祭り上げられてしまう老人たち。目の前の被害を食い止めるか、泳がせて上を狙うか、究極の決断を迫られる刑事たち。それでも今宮と仲間たちは捜査手法を駆使し、狡猾に逃げる詐欺グループの全貌を徐々に掴んでいく。そして今宮には、何としても首魁を挙げたいと思う、もうひとつの理由があった。かつて膨大な借金を背負い、闇金融の男から振り込み詐欺の片棒を背負わされた両親に言われ、それと知らず「掛け子」をさせられ、逃亡中の両親が事故死した忌まわしい過去があった。加地に組織から離れて善良な市民になって欲しい今宮だが、人間として真っ直ぐぶつかってくる今宮のために組織に食い込み首魁に辿り着こうと詐欺に再び手を出してしまう加地と少しずつすれ違う。
だが今宮たち捜査2課の懸命の捜査と加地が流す情報の甲斐があり、振り込み詐欺の首魁に徐々に近づいていく。だが振り込み詐欺のメソッドを作ったプランナーは、予想外の人だった。
映画「ギャングース」の元になった振り込み詐欺などのルポルタージュの著者鈴木大介の取材を元にして、安達奈緒美のオリジナル脚本によるクライムサスペンスドラマ。
膨大な借金を背負い、振り込み詐欺の片棒を担がされた両親に掛け子をさせられた忌まわしい過去を背負い、振り込み詐欺を憎む今宮。
借金から逃げるために両親から見捨てられ、弟が衰弱死し戸籍もなく生きてきた加地。コインの裏表のようなふたりの信頼関係を軸に、「オレオレ詐欺」「アポ電強盗」「地面師詐欺」など様々な振り込み詐欺に立ち向かう捜査2課の地道な捜査を通して浮かび上がる、社会から離れて生きがいや自信をなくした高齢者や車中泊で生き延びたり虐待や貧困で社会の底辺を這うように生きる「掛け子」をする青年たちそして「掛け子」をする青年たちを利用して金を稼ぐ暴力団という搾取の構造が表の社会と変わらない裏社会の非情さとそこに生きる人間の切実な心情がリアル。
「詐欺をするグループは、高齢者や人間を塊でしか見ない。個人個人はささやかなことで一喜一憂して生きている」
「正しいことをしなくてもいい。普通でいいんだよ。普通で」
「詐欺が、何故なくならないか分かるか?信じたいことを信じて人間が生きているからだ」
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