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ツイン・ピークス:リミテッド・イベント・シリーズの2MOのレビュー・感想・評価

5.0
もう劇場映画を撮るモチベーションにないと語ったリンチが、クリエイティブ面を完全にコントロールして完遂させたテレビドラマは、やはりクライマックスに向けてカタルシスを昇華させる映画的な喜びに満ちた18時間の大長編であった。

撮り溜めた断片を繋いだ『インランド・エンパイア』のような作品を予想するも、意外と言えば意外、言われてみれば納得の、リンチ作品の片方のエッセンスを濃縮した『ストレイト・ストーリー』のようなトーンでシーンは進められる。
ツインピークスであって、ツインピークスではない感じ。紛うことなきリンチのアートであるが、待ち焦がれたあの町のリターンではない。何か違う、新しい、不可解な物語が交錯している。
一方で、アンジェロ・バダラメンティの音楽が流れれば、クーパー捜査官(あるいはカイル・マクラクラン)が登場すれば、確かにそれはツインピークスの最新シリーズに違いないというノスタルジーをも喚起する。
予定不調和の緊張と興奮と、時より訪れる再会の涙に刺激され、再びこの幻の世界の虜となるのも時間の問題なのであった。

当初の予定通りの全9話でも、ストーリーを語り切ることは可能であろう脚本である。しかし9話を18話に、あるいは映画をテレビドラマに引き延ばすことでしか得られない物語の熟成と、クライマックスの持続、そして深く永い余韻が残る。
『ロスト・ハイウェイ』とも似て非なり、真相は依然、闇の中であろうか。
謎を残しながらも、円は美しく螺旋をなすロマンティシズムなる終幕に、私は物語が人生にもたらす救済の力を再び感じ入ることになるのである。

旧シリーズは何度も見返し、逃げ込む夢の世界であった。
25年後に更新されたこの物語の終り、ツインピークスの夢世界は現実世界のこちら側へと流れ込む。宇宙は繋がるのである。
暗転と静寂のとき、私は私がツインピークスの世界の住人たり得る分岐点を見つめていたのだ。
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