Kimono

ホテルデルーナのKimonoのレビュー・感想・評価

ホテルデルーナ(2019年製作のドラマ)
4.0
物語の後半は、まるでギリシャ神話の実写化を見ているのかと錯覚したほど見事でした。
精神世界を、美しい世界観で魅せ続けるこのドラマは、視聴者をその世界へ閉じ込めてしまうほどです。

しかし、一方で、このドラマのストーリーは、ドラマ、アニメからカンヌ映画まで、非常に幅広いジャンルの映像作品を観てきた私には、既視感があり、素直に世界観に入り込めないこともありました。

ここまで長い脚本ではなく、主人公と従業員の周辺に絞り、話数を短くしてドラマを作ったら間違いなく韓国の名作として世界に発信できるような作品になったと思います。

もともと、映像美や役者の表現に対して、強いこだわりを持つ韓国ですが、今回のドラマは、後半部分に、ピアノ曲がしばしば使われていた事が非常に良い相乗効果を生み出していたからです。正直、この相乗効果もあり、唸るほど幻想的で神々しいシーンがいくつもあったため、あと一歩という印象があり、非常にもったいないです。

既視感のあるネタと中だるみが発生した原因が、話数の長さにあると思うので、長ければいいという考えはあまりよろしくないのではとも思います。

全て視聴し終えた今、このドラマを一言で表すと、以下の通りです。

「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くで見ると喜劇である」

まさに、チャップリンの名言こそがこのドラマの主題だと思いました。

登場人物たちは、過去の記憶と感情に苦しめられ、とても長い間この世に留まりましたが、その悶えるほどの長く深い苦しみの最後には、美しい仲間に出会い、愛を知る事もできました。

人生は、時に悲しく、人は弱いが故に自分を勝手に縛りつけ、憎しみ、絶望に囚われるものであるが、諸行無常にも変化していく世の中で、その憎しみや悲しみ、絶望は、いつしか美しい涙となり、希望となるのだ、と。憎しみや悲しみを乗り越えたからこそ感じることの出来る感情ほど、人の人生を豊かにするものはないのだと。このドラマはそんな事を教えてくれました。

前半で、中だるみや既視感のあるストーリーを指摘しましたが、主軸の話や伝えたいテーマは、とてもよかったです。

若い世代は特に今後生きていく上で大きな勇気や支えとなるはずです。登場人物が背負ってきた過去は、独裁と差別によって生み出されたものであり、それは、現代にも形を変えて存在しているからこそ、沢山の方々にとって大きな光となると思うからです。


色んな方々に見ていただき、生きることとは何なのか、そして、死を迎えるとはどういうことで、いつかは死んでいく私たちはどうやって毎日を生きていかなければならないのか、このドラマを通じて考えていただきたいです。