りしゃこ

東京女子図鑑のりしゃこのネタバレレビュー・内容・結末

東京女子図鑑(2017年製作のドラマ)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

とにかく刺さる刺さる。主人公・綾は「憧れ」を糧に生きる、田舎から出てきた女の子。
雑誌やドラマ、映画、街の人から《こんな世界にはこんな人たちがこんな生活を営んでいるんだ!近づきたい!》と妄想を膨らませ、田舎の人を見て《狭い世界しか知らなくて可哀想》と思う。わかるなぁこれ。

手にしている幸せで満足するって難しい。でもこれで幸せなのって言い切る自信もない。


《以下ネタバレ》

このドラマの秀悦なところは、綾の住む街を変えながら、その土地に見合った生活や人と出会い、それをレベルアップさせていくところ。

キラキラした憧れの東京ライフを追い求めるため上京した綾が最初に選んだのが、三軒茶屋。昔ながらのお店や住宅街のなかに、こぢんまりしたオシャレ店が混ざり込む、無理しないカジュアルな街。でも、心地がいいのに何か物足りない。

若さを存分に生かしてもっと上に!とメラメラ燃える綾は、20代前半〜25の活気に沸く恵比寿へ。高収入の男とそれを狙う女が混じり合う、キラキラした街。もっと登れるはず。

転職とミステリアスで大人の色気を感じさせる男性との出会いに引っ張られ、たどり着いたのは銀座。東京の夜景を眺める高級ホテル。あんなに心から切望した上からの眺めは、なぜか少し虚しい。

周りの友人に焦らされる形で、婚活に励み、”悪くない”男性とゴールインする綾。豊洲のタワマンでの生活は、部屋の階数と比例するヒエラルキーや、子どもを持つ夫婦と持たざる夫婦に分断される世界。噛み合わない会話。

別れを経験し、同じく苦い経験を乗り越えてきた友人に囲まれた代々木上原でのスローライフ。見つめ直す自分の人生。あっという間に40歳になっていた。
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「憧れ」をエサにがんばって生きる女の子が、イチバン幸せになれるのってどんな人生?

自分基準で「幸せ」を定義したい。でも、何も考えず、他人とか世間基準の「幸せ」を取り込むようになったら、きっとわたしも綾のような人生を歩むことになるのだろう、と。

このドラマを見てこんなにも複雑な気持ちになるのは、こんな人生を自分も送るのかもという疑惑に、ぜったい嫌だ!と言い切れない自分もいること。でも確実に、素敵!とも思わない。じゃあ私はどうなりたいんだろう?


綾は《東京の女の子はロールプレイングさながら、キラキラした生活を手に入れるために努力する》といったけど、
綾は忠実に、東京女子の人生ゲームボードをやりきった。なにかを手に入れるたび、レベルアップして次の目標ができる。そうしてまた駒を進めていく。

一度地元秋田に帰ったとき、ゲームは終了したのだろう。そこから、今度は新しい自分だけのボードを作って、自分でマス目を書いて、人生をスタートする。それはそれで、人生としてアリなのではないだろうか。

わたしは自分のボードにどんなマス目を書こうか。単位を取り終えて、社会に出るまでの半年間をかけて、作り上げたいと思う22歳の秋…。


《30なる前にジョエル・ロブションに連れて行ってもらえたら大したもの》
《港区の男は結婚しない》
おお、そうなんだ。とりあえずジョエル・ロブションをググった。