みほみほ

チェルノブイリのみほみほのレビュー・感想・評価

チェルノブイリ(2019年製作のドラマ)
5.0
最高スコアしか考えられない 重厚ドラマ。
HBOに敵なし、外れなしを確信した。

これは 全人類が観るべき内容。
そして考えなくてはならない事が沢山あり、いかに自分が常日頃、脅威を見て見ぬふりして生きているのかを痛感してしまって、恐ろしくなった。

事故の悲惨さや、目に見えない放射能汚染の恐ろしさを存分に味わうだけでも地獄のような光景なのに、その先に見えるのはやはりソ連の恐ろしい体質や恐怖政治で、起こるべくして起こったとも言える人災に憤りが隠せない。

放射能汚染やあらぬ方向の妨害などの恐怖に屈することなく、命懸けで闘い続け真実を追求したレガソフやボリスの姿には涙が止まらなかった。命を顧みず、現場に携わった全ての人が凄い。

原発という特殊な場所にも関わらず、何の防護もなく消火活動に駆り出された消防士達の姿は見るのも辛かったし、何故ああも無防備な体制だったのかと疑問に思ったけど、安心安全を信じていたからこその悲劇なのかもしれない。

ボリスの存在のおかげで、レガソフが説明するシーンが多くあり、観ているこちらも噛み砕いて事故の流れを理解することが出来るので、チェルノブイリについて知識が殆どなかった自分が観ても分かりやすかった。(まだこの世に生まれていないので、あまり馴染みのない事故でした。)

ウクライナのチェルノブイリの地は原発事故のみならず、ナチスによるホロコーストや虐殺、そしてスターリンのホロドモールなど、血塗られた土地という悲しい歴史を持っているのも印象的でした。

そういう地だからこそ、新たな人々が移り住んだ上に成り立つウクライナという国が不安定な歴史を進んでいるのかと思うと悲しくなってしまう。ウクライナ侵攻が起きた頃は全く知識が無かったけど、本作はウクライナという地を少しでも深く理解する事の出来る素晴らしいドラマだと思う。

このドラマを観た後に、ウクライナ侵攻や 原爆投下を考えると物凄く辛くて、今も死の街と化し、作業員の遺体すら回収出来ていない事にただただ泣く事しか出来ないし、こんな恐ろしいものをよく人間に使ったな…とアメリカへの恐怖もふつふつと蘇ってくる。

化学は凄い。どれだけの人間が救われたことか…しかしどれだけの人間が化学に殺されただろう…と思うと、人類の進歩か産んだ悲劇とも言える原発事故や原子爆弾に複雑な思いを感じる。

それでも科学者が居るからこそ、事故の真相究明が出来るわけで、いい部分だけに使われれば科学の進歩は偉業なのに、悪い事に活用されてしまうことは少なからず起きる。人間の強欲さと闇を改めて感じるドラマでもあった。

電気を使う生活に慣れてる自分は原発の恩恵を受けている一人だけど、安全性を守れないのなら原発など人間が持っていいものでは無いし、そもそも人間が扱ってよかったエネルギーなのか…色々考えてしまう。触れてはいけないものだったのでは…いつか地球を壊すのではないかと本気で心配になっています。

人間のみならず、動物が好きな人にとってかなり辛い現実が描かれていますが、それも放射能汚染が起こす恐怖のリアルなので、目を背けずに観て欲しいと思います。

ウォーキングデッドと同じ監督という事ですが、本当に恐怖の描写とか 人間が放射能に曝された後の人体の変化の造形や描き方があまりに恐ろしくて、この監督で良かったと心から思いました。

これだけの悲惨なことが起きていながら、国の公式発表には納得がいかないし、亡くなられた命、現場の為に尽力した者が徐々に倒れていく姿をどう捉えているのだろうと思うと苦しくなるけれど、あの国相手にこうしてドラマを生み出せる事が奇跡で、このドラマが存在するのもレガソフの勇気と信念、国の脅威に負けないエンタメ界の力強さがあっての事なので、遠く離れた日本の地でありながら被爆国としてより身近に恐ろしさを捉えることが出来たので、観れた事に感謝です。

U-NEXTだけでなく、こういうドラマが日本の地上波でも流れたら良いのにな……

全5話ですが 1エピソード1時間あるから、映画2~3本観れちゃうくらいのボリュームになかなか気が進まなかったけど、観始めたら止まらない。

事故の真実や現場の空気に強いショックと憤りを感じ、チェルノブイリが土地をどう殺していったのか、見えない放射能、人間が勝てない脅威だからこその恐ろしさと見応えがあったので、U-NEXTを契約してる人は確実に観た方がいいドラマだと思います。

途中まで気付かなかったけど、ゴルバチョフも登場していてびっくり。(額にアザがある人)
個人的にプーチンは嫌いだけど、ゴルバチョフは何故か名前をよく聞いた記憶があるので、ゴルバチョフと聞くだけで懐かしさを感じる。(どんな事をした人か詳しくは知らないけど…)

ステラン・スカルスガルドがもう最高でした。声も雰囲気も良く、その存在感がドラマをより凄いものにしていた。「異端の鳥」ではナチス兵士を演じてた彼が、本作では ナチスやホロコーストを語っていたのが印象に残りました。今までそんなに馴染みがなかった俳優さんでしたが、本作で一気に心を掴まれた。

他にも観たことある俳優さんがズラリ。「レッド・ドラゴン」で盲目の女性を演じてたのが印象的な女優さんだけでなく、「特捜部Q」のアサドまで!!! バリー・コーガンもいい味出してた。

レガソフを演じてた俳優さんは、出演作は観たことあるものの認識していなかったのですが、ずっと観たかった「スモーク」に出演されているので 観るのが楽しみになりました。

ドラマは夢とか希望を映し出すものが多いけど、本作のように真実を追求する社会派ドラマは心に強烈な爪痕を残していきました。チェルノブイリ原発事故の事を知れて良かった。人物描写がしっかりしていた事で、死にゆく人間の命の重さをどっしりと感じられたのが素晴らしい。

HBOはやはり面白い。これは揺るがない事実。
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