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チェルノブイリのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

チェルノブイリ(2019年製作のドラマ)
4.0
【NO MANPOWER...】
本作は言うなれば鷺巣詩郎の音を失った『新世紀エヴァンゲリオン』だ。『新世紀エヴァンゲリオン』は絶望的な災害(使徒)に直面すると鷺巣詩郎の高揚感高まる音楽が流れ、人々は一致団結し、ヤシマ作戦のような日本的マンパワーを発揮する物語だ。しかし、現実はどうだろうか?東日本大震災を思い出していただきたい。あまりに常軌を逸した原発の崩壊に立ち尽くし、細々と水際の対策しかできなかった。その記憶がこの『チェルノブイリ』を観ると嫌でも蘇る。

何気なく、夜を過ごしていると窓から鮮血の噴火が飛び込み、衝撃波が家を揺さぶる。現場では、爆発の騒動が収まり、発電所で働く者は状況確認しに爆破地点に向かうと、誰がみても絶望的な程、タンクが傾き、全てが崩壊しているのです。コントルーム室は、絶望したった数人投げやりで対応する。政治家は、なんとかことを収めようと会議するのだが、保身で身を堅めようとするだけだ。それにより、市井は混乱する。軍が頑なに、人々の移動を妨げる。

また軍は強制撤退を市民に要求するのだが、80歳を超えるおばあちゃんは「あたしゃもう、ここで人生を終えるからいいんじゃよ。べこと一緒に居させてくれ」と言っているのに、「命令だ、俺と共に行くのだ」と牛を射殺するのだ。そして崩壊した原発近くでは、従業員が必死に土砂を穴に落としているのだが多勢に無勢。圧倒的な残骸を前に、暖簾に腕押しという感じなのです。

ひたすらに絶望、一切高まることのないマンパワーに、神の逆鱗に触れ、リンボに転送された人類は、あまりに現実離れした眼前に対し虚無が心を支配していくことをじっくり、じっくりとこのシリーズは描いてみせた。これは日本人必見です。
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