かずや

チェルノブイリのかずやのレビュー・感想・評価

チェルノブイリ(2019年製作のドラマ)
5.0
・追記2020/03/09再鑑賞。
日本政府のコロナウイルス対応がヤバい今だからこそ、再見したい。

その対応のヤバさの原因は、チェルノブイリ原発事故に対するソ連政府の対応を暴く本作が、普遍的に描いている。

その原因は、「責任の不在」と「隠蔽体質」であることが描かれる。ラストに視聴者に問いかけられる「嘘の代償」とは?

以下、レガソフが遺した録音の一部抜粋。

「科学者は実直な存在だ。我々は真実を求めるが、世の中の大半は真実の発見を望んでいない。だが、真実は常にある。たとえ人が見ようとしなくても。真実は、人の欲求や政府やイデオロギーや宗教に左右されない。ただ、発見される時を待っている。チェルノブイリはこのことを教えてくれた。
かつて真実の代償を恐れた私が問う。
嘘の代償とは何だろうか。
それは、真実を見誤ることではない。
本当に危険なのは、嘘を聞き過ぎて、真実を完全に見失ってしまうことだ。
そうなった時どうするか。
真実を知ることを諦め、誰かが作った物語で妥協するしかない。
物語における人々の関心は、"ヒーローはだれか?"ではなく"悪いのはだれか?"だけだ。

人々は、悪者に裁きが下れば、それでいいのだ。人々は、公正なのが健康な世だと思っている。
だが、チェルノブイリは違った。
あの場所で起きたことは、我々の行いも含め、すべてが常軌を逸していた。
以上が、私が知っているすべてだ。彼らは否定するだろうが。
このテープを君に託す。」









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全5話鑑賞。超絶大傑作。

全人類が観なくてはならない物語。特に、被爆国の人間として、原発事故経験のある国の人間として、決して他人事と考えてはいけない壮絶な訓話。
オルタナティブファクトやフェイクニュースが蔓延する現代だからこそ、語られるべき、そして観るべき物語に仕上がっている。

明らかになる事故の真の原因。嘘の代償。体制側は、政府は、自分たちに都合の悪い真実・事実を、数々の嘘と秘密で隠蔽し無かったことにする。まるで、チェルノブイリ原発事故原因究明、その後の対処および他の原発事故防止に多大なる貢献をした本作の主人公ヴァレリー・レガソフが、徹底的に歴史の闇に葬られ彼の仕事が無かったことにされたように。レガソフは、間違いなく勇敢で英雄だ。

しかし、真実を消すことはできない。たとえ誰も見ようとしなくても。嘘をつくたびに真実へのツケがたまる。そのツケは必ず払わされることになる。そのツケこそが、このチェルノブイリ原発事故による甚大な被害だ。

本作は、チェルノブイリ原発事故の原因を突き止めた主人公レガソフたちと同様に、隠蔽され無かったことにされたレガソフたちの仕事の真実を掬い上げ、白日の元に晒す。

そしてまた第1話から見直したくなる。


◼️第1話
アマゾンプライムで無料鑑賞。
強烈。
大ごとにしたくないからか、現実を見ようとしない無能な上司の嘘のせいで、どんどんと現場の人たちが死んでいく。しかし、これは意図的なウソではなく、心理学的な正常性バイアスという人間の防衛本能にも見える。
そして、着実に拡散されていく死の灰。

日本人なら、否が応でも福島第1原発事故を思い出してしまうだろう。

セリフでもあったが原発事故で燃え盛る炎の美しさと対比して、起こっていることの尋常じゃない恐ろしさよ。
終始、恐怖を煽る重低音の劇伴も素晴らしい。
第1話だけで大傑作と確信できる。
全5話は少ないと思ったが、この後の展開を考えると十分キツい。。


■第2話
体裁を気にして行動する政治家の前では、科学的知識と数字を根拠に理性的に行動しようとする科学者は無力か。知性の敗北。恐ろしい。
ラスト、構内に鳴り響くガイガーカウンターの計測音が恐ろしく不気味。


■第3話
被曝者の皮膚や肉体が、文字通り、どんどん崩れていく様が痛々しく恐ろしい。ここから、真の調査が開始される。
途中、意味ありげに何度も背景に映される絵画「イワン雷帝とその息子」。その絵画で描かれる、狂気により息子を殺してしまうという「取り返しのつかない誤ちと悔恨」は、まさにチェルノブイリ原発事故とそれに対するソ連政府の対応を象徴している。
http://gemeinwohl.jp/2020/02/07/イリヤ・レーピンの『イワン雷帝とその息子』を/

■第4話
この話に登場する人間は、いずれも非人間化、人間としての大切な何かが奪われ、失っていく。バイオロボットと呼ばれて非人間的に扱われる作業員たち、放射能汚染された動物を殺処分して回ることで非人間化していく作業員。わずかな報酬や酒、タバコで目眩し。
しんどい。。

■第5話
圧巻。エンドロール前に流れる主人公レガソフをはじめとする登場人物たちのその後や、原発事故の甚大な被害と数十年に渡る健康被害と自然への被害。事故の顛末を知ったからこそ、より一層恐ろしい。
嘘の代償とは何か?第1話の冒頭に繋がる録音音声なので、また1話から見直したい。

レガソフが残してくれた録音テープがなければ、このことは明らかにならなかったかもしれないと思うと、ゾッとする。