Kenta

チェルノブイリのKentaのレビュー・感想・評価

チェルノブイリ(2019年製作のドラマ)
4.9
1988年4月26日。レガソフは自殺した。何者かに監視されながらも、遺書のように一つのテープを遺して。彼は、あのチェルノブイリ原発事故の対策に携わった優秀な科学者であった。
その2年前。1986年4月26日午前1時23分45秒に、あの世界的大事故であるチェルノブイリ原発の爆発が起こる。発電所の職員たちも収集がつけれず、消防隊は消火するため出向し始める。
しかし、とんでもない線量に気付くこともない消防隊たちは、徐々に倒れていってしまう。しかも、総責任を担っていたディアトロフは、何も知らないまま嘘の報告をする。レガソフは、この大事故を処理するため、政府から出向を命じられるのだった…。

これはとんでもないドラマを観た。
これは現実なのだ。先人がやらかしてしまった正真正銘の事実なのだ。ソビエトの話をアメリカが製作しているため、多少なりともフィクションで盛ってるところ等はあるかと思うが、大まかには忠実に表現しているのだと思う。チェルノブイリ原発事故については、正直なところ興味もあまりなく、史実なんてものは関心すらなかった。だが、観た側から言えるのは、このドラマは必修とも言えるほど、記憶に焼き付けておかなければいけない事件の事実がある。それだけは言える。

嘘の代償。
嘘を積み重ねる政府や重役。人間だからしょうがないのかもしれないが、やはりめんどくさいことは避けて生きたいのが真理である。それがためか、ありえない真実であっても上層部は信じない。むしろ、信じたくないのだ。本当のわけがないとみな自己暗示するためである。その積み重ねのツケはでかい。それをこのドラマから率直に受け取った。

レガソフの栄光。
彼は確かに隠蔽を明らかにしなければ英雄になっていたかもしれない。しかし、ここでまた隠してしまえば、このツケはチェルノブイリ原発事故以上のレベルになると悟ったのだろう。結果として、政府の敵扱いになり、社会的に抹殺されるが、彼こそが真の英雄であろう。それに対して、ディアトロフはイヤなやつだ。自分の非を認めようともしない。彼に対しては非常に胸糞の悪さを感じた。

事実を証明するラストエンディング。
エンディングの前に本物の姿が映る。そして、レガソフの自殺が無駄でなかったこともわかった。彼の決死の告白は、多くの科学者を動かした。そして、RMBK原子炉については改良が加えられている。同じ失敗を繰り返さないために。
我が国日本も割合はとても少ないが、原子力発電を行っている国の一つである。過去の広島、そして、直近の福島と、事故も起きている。チェルノブイリほど大きな事故は起きていなくても、日本はここから何か学ぶことがあるかもしれない。決して他人事ではないこと、そして、原発事故の真の恐ろしさをこのドラマから理解する必要があると思う。
Kenta

Kenta