GreenT

チェルノブイリのGreenTのレビュー・感想・評価

チェルノブイリ(2019年製作のドラマ)
4.0
これすごい!

1986年にソ連で起きたチェルノブイリ原子力発電所の事故を克明にドキュメンタリー形式で描いているのですが、撮影、脚本、音響効果、全てがめちゃくちゃ優れている!!

第一話から既に、原子力発電所から不気味な閃光が上がっているのをアパートの窓から眺める住民から始まる。住民のほのぼのした日常生活を写してから〜とかじゃなくて、いきなりここからずーっと緊迫状態が続く。

なにが起こっているかわからない住民たちは、まるで花火大会でも見に行くように、子供連れて、ご近所で連れ立って近くの橋まで行って様子を確かめようとする。この頃って、放射能が風に乗って流れてくるって知らなかったのかな?空気の中に小さい塵がふわふわ浮いている映像が、非常に美しいのだが、ゾワゾワする。

本当に、映像がすごい美しい。爆発した発電所が、「これ直せるのかよ」と愕然とさせられるほどひどいのだが、それは映像のリアリティと迫力がすごいからだ。どこまでCGI なんだか全くわからない。爆発の規模の大きさが良くわかる。あの煙の量、公害が起きかねないので多分本物じゃないんだろうが、全くわからない。これに比べたら『レヴェナント:蘇えりし者』のCGI なんて子供だましだ。

原子力発電所内でも、なにが起きたのかイマイチ把握できていないようで、人間が行って確かめるんだけど、被爆するってわかってるのかな?着ている服も普通の白衣のような布の服だし。リアクターとかドア開けて目視するって!

放射能被爆した人たちがどうなるのかも、被爆のレベルによって違いが描かれていてゾッとした。どう転んでもいい死に方は出来ない。治療して回復した人もいるっていうのが逆に驚きだった。

しかし発電所のダメージがデカすぎて、機械で遠隔操作もままならず、人間が被爆覚悟で後処理するしかないのだが、それを「やらないわけには行かない」と行く人がいるところが心を打たれたし、心が傷んだ。

大問題が起こっているということを受け入れられない発電所の責任者や、なんとか穏便に済まそうとして地域住民の避難などを回避しようとする政府。これって、アメリカのコロナ対策に通づるところがあって本当にゾッとした。

第1話から3話くらいまでは、この爆発の想像を超えた規模と、これを収束するための方法が次々と出てきて、全く中だるみがない。音響効果が緊張感を保っているし、役者の演技もいいし、衣装や大道具もすごい作り込んであって嘘くさくないし、進行のペースもいい。

なにより、人間ドラマをきちんと描いているところが興味を持たされる。

しかし、歴史的事実をドラマ化すると、必ず批判が出る。このシリーズも、「原発事故に様々な形で関わった普通の人たちを真摯に描いている」という絶賛もあるし、「ドラマチックに創作し過ぎ」という批判もある。炭鉱労働者たちが被爆覚悟で発電所の下に穴を掘るシーン、あまりに高温で暑すぎて、みんなフルチンで作業しているところがめちゃくちゃインパクトあったのだが、あれは誇張らしい。みんな服は脱いだが、フルチンにはならなかったそうだ。

また、私が一番心が傷んだ、住民が避難するときにペットは連れて行けず、残された動物たちは、被爆しているから殺されるシーンがあったが、あんな風に殺したりはしなかったらしい。

私が一番気になったのは、原子力発電所の責任者二人と現場監督?みたいな人3人が極悪人みたいに描かれていたこと。緊急ボタンを押したのに、なぜあんな大被害になってしまったのか?という疑問には確かに私も興味があって、後半の謎解きは期待していたのだが、テクニカルな説明が私にはくどすぎて興味が薄れたのと、「元々、ソ連がケチってちゃっちい作りだった」「緊急装置に欠陥があるのを隠蔽していた」「自分の昇進ばっかり考える現場監督」などなど、様々な要素で事故が起きたのに、裁判では3人を徹底的に叩こうとしているのが悪い意味で意表をつかれた。

このシリーズの製作国がイギリスとアメリカなので、この人達の「ソ連政府」の描き方は100%鵜呑みにはできないなと思うし。すごいリサーチして、真実を伝えようとしているとは思うけど、イギリス、アメリカはとにかく「共産主義=悪魔」的な考えをしていた人たちなので、特に意図しなくてもソ連はひどい政府だったって描かれる可能性はある。そこは視聴者の方が意識して客観的に観るべきだと思う。

私個人的には、ソ連がどうこうよりも、政府ってこうだよな〜、権力ってこうだよな〜って思った。ゴルバチョフとか政府高官は、豪奢な会議室で政策を決めるから自分が被爆するわけじゃない。主人公の科学者なんて、なんの関係もないのに知識があるからって駆り出されて、被爆するってことさえわからぬまま現場に連れて行かれて、もうアウトじゃん。

炭鉱労働者、消防士、原発のエンジニアなど、本当に働いている人たちが上層部がウダウダしている尻拭いをさせられて死ぬ。炭鉱労働者たちが、発電所の仕事を命令しに来たソ連の政府のバッジを付けた役人の水色のスーツを、ポンポンと叩いて煤で真っ黒にしていくところが、せめてもの復讐って感じで泣きそうになった。