れじみ

チェルノブイリのれじみのレビュー・感想・評価

チェルノブイリ(2019年製作のドラマ)
4.5
死の灰が画面の外まで降り注ぐかのような重苦しさ。線量計の針が振れる音の心地悪さ。目に見えない恐怖に晒され、マスク着用を余儀なくされた世界はまさに現在のコロナ禍を彷彿とさせる。過去の過ちを指摘すると同時に未来を予言した本作は映画が果たすべき役割を見事に全うした。

あまりにも凄惨な映像と展開が続くので、人間が地球に存在する価値、こんな世界で生きていく意味があるのか、そんなことまで考えてしまった。放射能拡散を防ぐために動物を殺処分する描写は、コロナの変異を防ぐためにデンマークで大量のミンクが殺処分されたニュースを思い出す。

"ウソ"という人間の根源的な罪に結末を持っていったのが出色。ソ連が解体されてロシアになった今も国ぐるみで五輪にドーピングした選手を送り込んでいる。30年以上経った今も体質は何も変わってない。直近の米大統領選も"ウソ"に翻弄された選挙だった。もちろん日本も例外ではない。

結末には夢も希望もない。あるわけない。暗闇に包まれたままの現在と地続きの世界なのだから。容赦なく放射能で人が死に、動物は呆気なく殺され、住む場所を奪われ、政府は何の責任も取らない。そんな最悪な世界だからこそ主人公とボリスの間に芽生えた"ウソ"のない友情が引き立つ。
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