きき

チェルノブイリのききのレビュー・感想・評価

チェルノブイリ(2019年製作のドラマ)
4.7
"What is the cost of lies?"

全人類が観るべき。

エミー賞やゴールデングローブ賞の受賞で凄く話題になり、ずっと気になっていたリミテッド・シリーズ。
年末年始にスターチャンネルで一挙放送があったので、漸く鑑賞。

1986年4月26日に起きた、ソ連のチェルノブイリ原子力発電所の事故に関するHBO制作のドラマ、全五話。

最初はイッキ見しようと思ったのだけど、無理だった。

ドラマ、と簡単に言っていいような、娯楽作品ではない。
ドキュメンタリーに近い実録ドラマで、想像以上の酷さを突きつけられる。
一部創作もあるようだけど、それは問題ではないと思うの。

事故のことは、わたし自身が生まれる前の話なので、酷かった、と聞いたレベルでしか知らなかったのだけど、本当に、酷かった。
今から30年以上前だから、防護服もちゃんとしたものはないし、時代が関係あるか分からないけど、知識もあまりない。

何が酷いって、視覚的なものは勿論、物凄い値の放射線量の被爆者がどうなるのか、本当に酷くて言葉を失う。
目に見えないから分からないけど、最後のテロップでどうなったか知った人たちのこともあって、本当に放射線って怖いって思うし、ただひたすらに凄惨な事故の現実をまざまざと見せつけられる。

それから、次に酷いと思うのは、人間の嘘や欲に塗れた保身と他人に罪を擦り付ける自分可愛さの言動。
人命が先じゃないの?と驚くようなセリフが何度も出てくるから、これが本当に起きたことなのかって瞬きばっかりしちゃう。

そして、人間の愚かさ。
特に酷かったのは、汚染された地域から人間は退避させるのだけど、動物、ペットたちは置き去りで、その犬たちを撃ち殺すシーンがある。
酷い、酷すぎる…せめてもの情けなのか、苦しませるな、と言っていて、確かに今後薬もなく助けられないのなら、ひと思いに殺してあげる方がいいのかもしれない。
でも、そんなの分からないのに、子犬まで手にかけるのは本当に泣けた。
胸が痛すぎて思い出し泣きしそうなくらい。

その置いて行かれた犬たちの姿が、東日本大震災の跡地でよく放送されていたそれに似ていて、ますます胸が痛くなる。

こんな事があったのに、世界はどうして未だに色んな形で核を保有し続けるのだろう。
確かに便利になるに超したことはないけど、それが罪のない動物を、自然を、地球そのものを傷付けて、壊していってるのに。

綺麗事だけど、やっぱりもっとみんなが他人に優しくなれる世界になったらいいな。
特に今なんて本当にそれ、もっと人を思いやれる世界になったらいい。

それにしても、出演陣の渋い演技が堪らない。
めちゃくちゃリアル。

辛かったけど、観て良かったな。
二日かかっちゃった。

記録 : 2021年2本目。
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