まちゃん

チェルノブイリのまちゃんのレビュー・感想・評価

チェルノブイリ(2019年製作のドラマ)
5.0
チェルノブイリ原発事故の想像以上の深刻さに背筋が寒くなった。1986年4月26日、人類は確実に滅亡の淵に立っていたのだ。この作品では事実を丹念に積み上げて事故の実態を描きだす。知識を与えられずに放射能の中で無防備に過ごす人々。その結果としての目を背けたくなるような凄惨な放射能被害の実態。ガイガーカウンターが激しく鳴る音はどんなホラーよりも恐ろしい。その過程で硬直した組織の病理が浮かび上がる。共産主義無謬神話を守る為に真実を口にする事が出来ないソ連の国家体制の恐ろしさ。希望的観測に縋り付き事故の深刻さに目を向けようとしない原発責任者。しかし、彼らの愚かな姿は決して他人事と思ってはいけないと思った。そんな絶望的状況下で事故に立ち向かう人々も描かれる。特に主役レガソフ博士とボリス・シチェルビナ副議長は印象的だ。始めはレガソフを軽視していたボリスがやがて事故の深刻さに気付き共に立ち向かうようになる関係性の変化には静かな感動を覚えた。そして彼らの指揮の下で命を張って放射能に立ち向かった無名の人々。彼らの事は決して忘れてはならない。人類の愚かさ、崇高さ。全て描かれた必見の名作だと思う。
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