こたつむり

水晶の鼓動 殺人分析班のこたつむりのレビュー・感想・評価

水晶の鼓動 殺人分析班(2016年製作のドラマ)
4.0
★ 「大丈夫、何かあったら
       お前の後ろに隠れる」

殺人分析班シリーズ第2弾。
ということで前作が下敷きにある作品。確実に予習が必要です。

何しろ、本作の主軸は殺人事件ではなく。
あくまでも主人公《如月塔子》の成長。彼女が何に傷つき、どのように成長してきたのか…それを知らないと“面白さが半減”するのです。

しかも、この成長具合が絶妙なんですよね。
キチンと壁にぶつかり、周りに助けられ、そして自分が気付く。そのルーチンが丁寧かつテンポよく描かれているのです。

それは事件の描写でも同様。
部屋中が赤いペンキで染められた中での殺人。扉に描かれた「○×」の印の謎。唐突に起こる爆弾テロ。警察を尾行する謎の影。全力疾走ほど速くなく、されど歩くわけでもなく。見事なまでのスピード感で駆け抜けます。

そして、それを裏付ける洋画のような演出。
画の完成度がテレビドラマのレベルではありません。というか、ロケ地の選定からして映画レベル。最初の事件が起きたアパートは本当に日本でしょうか?何だかアジアの雰囲気が漂っていましたが…存在感が違いました。

正直なところ、前作とは段違いの完成度。
でも、監督さんは同じなんですよね…うーん。何が違うのでしょう。確かに事件としては王道の展開。演出しやすかったとは思いますが…経験値の違いでしょうか。

それを考えると役者さんたちの佇まいも納得。
主人公を演じた木村文乃さんは当然のことながら、相棒かつ上司である主任を演じた青木崇高さんは“ぶっきらぼう”なだけではなく、愛嬌が伺える場面も。だから、二人の絡みが尊いわけで。いいなあ。この距離感。

あと、忘れてはいけないのは“彼”の存在。
某有名サスペンスを彷彿させる(というか既に定番な)展開は肩が下がるものの、キチンと“意味”を見出し、その先に光を当てていました。これ、本当にテレビドラマかな。スゴイや。

まあ、そんなわけで。
警察という男性社会の中で成長する女性刑事の物語。犯人ではなく刑事に焦点を当てているので、それを念頭に置いて臨めば、鳥肌が立つ展開に歓喜の声が漏れるかも。

なので、難点については口を閉じるが吉。
日本の図書館なのに『セブン』みたいだとか、品川駅なのに相鉄線が停まっているとか…そういうツッコミは野暮ということで(←つまり僕が野暮)。
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