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新米史官ク・ヘリョンのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

新米史官ク・ヘリョン(2019年製作のドラマ)
4.4
時代劇ではありますが、自立した女性の活躍を描いた現代的なテーマで、めちゃくちゃおもしろく見れました。

まず、史官という仕事についてのお仕事ドラマとしても面白くて、史官というのは、宮廷内であった会談や会議、王族の生活ぶりなどに密着し、それを記録していく今で言うところの書記の仕事ですが、史官としての仕事内容だけでなく、誇りや矜持がしっかりと描かれているのが良かったんです。

史官によって記録された公文書は、時には権力にとって不都合なこともあり、改竄や削除などを求められたりして、権力に利用される恐れが常につきまといます。
そのため、史官は独立性が高く、史官によって書かれた記録は、権力者にも見せてはならないし、権力者も見せることなどを要求できないと法で定められています。

主人公のクヘリョンは、女性初の史官として採用され、宮廷の離れで幽閉されたように暮らしている王様の次男であるトウォン大君付きとして働くことになりますが、このトウォンが町の貸書店で最悪の出会いをした恋愛小説家のメファだったので、はじめはバツが悪かったのですが、一緒に過ごすうちに互いに惹かれていくというラブストーリーでもあります。

史官と大君とで身分の大きな違いはありますが、へリョンがトウォン大君に対しても、自分の生き方を貫こうとし、またトウォンも王族という自分の立場と生き方の狭間で葛藤しながらも、自分の生き方もへリョンの生き方も尊重するところや、ラブストーリーにありがちな結婚こそが幸せなゴールという描き方ではなく、結婚という形をとらなくても、愛し合えるし幸せでいられるということを描いたのがとても良かったです。

また、迫害を受けるような異教徒や外国人に対しても敬意を払い、対等平等に接する人としての正しさや、その当時の朝鮮では認知されてなかった天然痘の新しい治療法も西洋の医学知識も取り入れて研究し、人々を助けようと命がけで闘った人々や、身分や男女を問わず、学びたい子どもが教育を受けられるような学び舎を作り、国家に弾圧されながらも、理想や希望を捨てずに守ろうと闘った人たちのことなどが丁寧に描かれ、権力の虜になってしまった政治家と対象的に、そういった民の力や真実が持つ力が強調されていたのも心を打ちました。

へリョンの職場である芸文館では、初めての女性史官ということで、パワハラやらもありましたが、史官という仕事に誇りを持ち、命を賭けてまでも史官としての責任を全うしようとしたり、一丸となって権力に対しても怯まずに正しいことを貫き通すところも感動的でした。

キャストも魅力的で、トウォンを演じたチャウヌがもう!人類にこんな麗しい人間が存在したのか!というレベルの美しさ、可愛らしさで、顔天才と言われるだけあって、24時間365日ずっと眺めてられる自信あります。
吉沢亮や嵐の松潤にも似てるんですが、とにかく韓服も似合うし最高です。
人類の宝。

へリョンを演じたシンセギョンも、落ち着いた低めのトーンの声がすごく魅力的だし、凛として自分を持ってる大人の女性を完璧に美しく演じてて、ほんとに大好きになりました。

李氏朝鮮時代ですから、日本で言うところの江戸時代くらいで、フランス革命への言及もあったので1800年代頃の設定だと思いますが、いかに公文書が大切で、絶対に権力者にも触れさせてはならず、それを破棄したり改竄することは重罪であり、ずっと後世まで大事に守り続けていくべき歴史資料であること、国のありようや生活ぶりなど、後世に伝える貴重な国民の財産であるということを理解し、史官たちは公文書を守るために時に命懸けで権力にも対峙していくわけですが、不都合な証拠はシュレッダーにかけたり、部下に改竄を命じて自殺者が出てもシラを切り通す日本の官邸やら官僚は200年前に逆戻りしてるなと思って情けなくなるし、この史官たちの爪の垢でも煎じて飲んで欲しいくらいです。

時代劇ですが、ほんとに見やすいし、可愛い胸キュンラブストーリーあり、謎解きミステリーあり、見応えある人間ドラマあり、チャウヌのただならぬ可愛らしさも堪能できるし、ほんとに良い作品でした。

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