しゃもじお兄さん

ウォッチメンのしゃもじお兄さんのレビュー・感想・評価

ウォッチメン(2019年製作のドラマ)
3.6
原作の知識が必須のドラマ。自分は未読ですが、原作のストーリーを知っており、映画版も観ましたし、映画版の変更点も知った状態でした。

ウォッチメンだがあえてウォッチメンの逆をも行っているとも言えそうだ。時系列としては原作の後日談であり、それでいて原作の持つ歴史改変SFの側面をリ・イマジネーションして展開した完全オリジナルストーリーの新作。基本プロットは特殊制度下の警察モノ。ヒーロー要素、スーパーパワーの要素は後景になっている。

人種差別団体による警察官の自宅による一斉夜襲テロ事件が起きた結果、警察官は様々なマスクやヒーロー名で正体を伏せるという制度がしかれたアメリカでの特殊クライムドラマ。もはや自警団ヒーローとしての"ウォッチメン"はほぼほぼいない。

Dr.マンハッタンの参戦でアメリカがベトナム戦争に勝利したのは原作にもありましたが、このドラマシリーズではその後、共和党レーガンの代わりにリベラル俳優ロバートレッドフォードが大統領に就任し、80年代にはリベラルな機運とマイノリティの権利が向上。しかも憲法改正で、レッドフォード政権は30年持続した。しかし、それは今日のような一部の右翼の白人層とマイノリティの暴力的な分断を速く発生させてしまった。

ヒーロー映画時代を逆手にとった大人向けヒーローモノとしてザ・ボーイズがありますが、ボーイズがブラックユーモアに溢れていたのに対し、本作は終始シリアスです。

正直、ブラッククランズマン並みに黒人差別問題を強く扱っており、そこは胸に迫るものがありますが、ドラマ全体としては、設定上の無理を質の高い演出でがんばってカバーしてる感は否めない。オクラホマ州タルサでの黒人虐殺が事実なのは酷すぎる事件や。

しかしどうやったらこんな複雑な構造の脚本(分かりにくくはない)が書けるのやら。Dr.マンハッタンという過去現在未来に同時に存在してるキャラがいてこそできるストーリー!

マスクマンの中ではルッキンググラスが好きかなー 煮豆食うシーンはロールシャッハオマージュ。

オイル全身タイツ野郎なんだったんだ笑

結局のところ評価の高いウエストワールドも本作も、伏線回収と謎の解明に終始してるだけやな。

今から考えるとスナイダー版は結構頑張ってたな!特に空気感!