原作の重要な要素である「その時代のリアルな恐怖や対立を背景に、多数派による少数派の無視や蹂躙、または根本的に人が人を統治するという行為そのもの」の問題点を、映画版『ウォッチメン』以上にうまく取り上げていると思います(あっちはあっちで他にいいところがたくさんある作品ですが)。
時代背景は「東西冷戦」から「分断」へ。
モチーフは「ヒロシマ・ナガサキの原爆」から「タルサ暴動」へ。
対立は「米ソの核戦争の危機」から「オクラホマ州タルサの警官VS第7騎兵隊の抗争」へ。
一見ぜんぜん違うものへ移ろっているように見えて、これらは実は相似関係にあると思います。
登場人物もそうで、物語内での役割などが絶妙に「ああ〜この人はコメディアンだな」「この人は前作のオジマンディアス的な立ち位置かな」と考えるのも楽しい。
個人的にはルッキンググラスのエピソードをもう少し増やしてほしかったかな〜と。ロールシャッハとはまた違いますが、彼もまた孤高で静かにイカれる哀しい漢でしたね。