はる

ウォッチメンのはるのレビュー・感想・評価

ウォッチメン(2019年製作のドラマ)
5.0
アメリカの埋もれた歴史にスポットを当て、原作すらも超えていったHBO渾身のエンタメ大傑作!
ウォッチメンというと誰でも知ってるアラン・ムーアのグラフィックノベルの名作で、過去に映画化もされましたが、そのドラマ版って正直どうなの?とドラマが始まった頃は思ってました。とはいえHBO製作だし評判も良さげなので、最近HBOを大量投下してきたU-NEXTにて視聴しました。
原作でオジマンディアスが大事件を起こした数十年後を舞台に警察と第7騎兵隊と呼ばれる白人至上主義団体の戦いを軸にSFにラブストーリーと時には作劇をガラッと変えたエピソードがあったりとドラマの特性を活かした作りになっています。第1話の冒頭は1921年にオクラホマのタルサで起こった白人による黒人大虐殺のシーンから始まります。かなり衝撃的な事件ですが本国でもあまり知られていないそうです。この百年前の事件が現在に起こっている事にジワジワと繋がっていき、第6話あたりから爆発していきます。
ヒーローモノですが、MCUのような派手なアクションや特殊能力はあまり出てきません。とはいえマスクをつけたキャラクターは登場しますし、劇中の警察官も皆が黄色のマスクをつけています。普通のヒーローモノならただのアイコンに過ぎないマスクもこのウォッチメンには重要な意味付けがされています。警察官の顔が第7騎兵隊にバレるとその家族も標的にされてしまうから皆マスクで顔を隠しているんですね。第7騎兵隊もロールシャッハのマスクを付けているのでマスクマン同士の戦いといった感じですね。
良く出来ているのは第1話、第6話、第8話。正直全部のエピソード素晴らしいですが、この3つは飛び抜けている印象です。特に第8話、最終話を目前にとあるラブストーリーが展開していきます。あまりにも美しく、ロマンチックで観終わってからもしばらく涙が止まりませんでした。とあるキャラクターの"This is the moment"という台詞があるのですが、コレがヤバい。観た人なら分かると思いますがとんでもないキラーフレーズです。
どこをとっても超一級で、当然ストーリーは面白いし、他では観たことがない異常な映像もたっぷり観れる。そしてサントラ、選曲のセンスも抜群。ちゃんとエンタメしつつ今日のBLMの情勢からも目を逸らさない。日本ではこのレベルの作品は出てこないだろうなとアメリカという国の表現に対する真摯な姿勢に嫉妬すらします。もっと早く観ておけば良かったです。特に原作ファンで懐疑的な人は必見だと思います。唸らされること間違いなし!
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