なべ

W -君と僕の世界-のなべのレビュー・感想・評価

W -君と僕の世界-(2016年製作のドラマ)
3.9
 人気マンガの世界と現実世界を行き来するSF。韓国ドラマなので基本恋愛ものなのだが、世界観の構築が素晴らしすぎる。
 日本でリメイクしたら滑稽でバカっぽくなるのは必定のストーリー展開。これを成立させてしまう演出の巧みさと演者の技量が羨ましい。冬ソナの昔から韓国ドラマはもう日本が追いつけないところまで進化してるよ。
 韓国ドラマお得意の記憶喪失が出てこなかったのもポイント高し。

 以下、ネタバレしますが、知ったからといっておもしろさは損なわれません。むしろそれをきっかけに興味を持ってもらえたらと思ってます。

 家族全員を殺され、その犯人だと疑われながらも不屈の精神で運命をねじ伏せてきた主人公が、世界の仕組みを知り、創造主(漫画家)に会いにやってくるシーン。漫画家に銃を突きつけて自分に付いて回る理不尽の正体を聞く。
「それはそういう設定だからだ」
 この時の、カン・チョルの底知れぬ絶望が恐ろしくて。耐えてきた苦難の数々が読者を喜ばせる、ただそれだけのためだったとは。創造主はさらに続ける。
「俺が並外れた忍耐力と高い知性を与えたから、おまえはこの世界のカラクリを知り、ここまでやってこれたのだ」と。これ、なかなか痛烈な言葉じゃない? 自分の存在の揺らぎが、その恐怖がきちんと演技されててすごくいい。
 怒りにうち震えながら、創造主を撃たんとする主人公カン・チョル。だがここでも創造主は強かった。
「お前は撃てない。なぜなら法を遵守し、正義を貫くのがお前の設定だからだ」。ああ、さすが神。
 神と人との対話をこれほどスリリングに熱く描いたドラマってあったっけ?
 ここで物語の半ばだからね。ここから、設定を失った登場人物の末路や、真犯人との攻防など、失速しそうでしない踏ん張りを見せつつ、終わっては始まる連載を見事完結させたときは脱力したわ。
 さらに、ほろ苦いラストからの急展開など、最後までヤキモキさせながら気持ちよくぼくのココロを弄んでくれた。
 何気にマンガの世界に入るところとかマトリックスを思わせる描写でゾクゾクするので、その手のSFドラマが好きな方にもおすすめ。もちろんヒロインのオ・ヨンジュ(ハン・ヒョジュ)のかわいさも見どころのひとつ。
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