ピッツア橋本

レディ・ジョーカーのピッツア橋本のレビュー・感想・評価

レディ・ジョーカー(2013年製作のドラマ)
4.7
“ジョーカーを引かされた者たちへ”

超大手ビール会社の社長がレディジョーカーと名乗る誘拐犯に拉致監禁される所から始まり、企業癒着やスキャンダル隠ぺい、警察の体質、政財界の闇に迫る社会派サスペンス連続ドラマ。計7話。

まず話の構成としてレディジョーカーが誰なのか視聴者は判りつつ、彼らに翻弄されていく社長の柴田恭兵や警官の上川隆也たちの群像劇、人間模様が目まぐるしくて重厚。

1話で語られるから晒すと、レディジョーカーの主犯格に現役刑事の豊原功補がいて、文字通り捜査をかき回す。
山本耕一ら新聞記者たちも命懸けでこの誘拐事件あるいは裏金の闇を追って暗躍する感じがたまらない。
何気に柴田恭兵社長の両腕、二大副社長たちも自身の持ち場を全うしつつ、責任感と人情に揺れる様を見せつけてくれて応援したくなる。

序盤は“ジョーカー(ババ)を引かされた善良な社長の悲劇”が主軸だけど、後半に進むにつれ、実は登場人物一人一人が何かしらのババを引かされたり隠し持って必死に生きている事に気づかされる。
本作はクライムサスペンスというよりも、実は大人たちのプライドと責任、そして美学を問う人間ドラマである事がわかってくる。

ネタバレスレスレでいうとレディジョーカーが犯人ではなく、現象や記号になっていく様がすごく皮肉な面白さが出てた。自分が創造したものが想像をはるかに超えていくのは実は最も恐怖なのかもしれない。最初の野心はどこへやらってなる苦笑

すべての登場人物たちの死因は殺人ではなく、覚悟による戦死といえよう。
第6話と最終話の倉田副社長の瀬戸内レモン畑のくだりは本当に儚い気持ちになって泣けた。ありありとその夢の様を想像してしまい本当に泣けた。

城山社長(柴田恭兵)がついた数々の優しい嘘に乾杯。

本当に重厚な連続ドラマでした。見ごたえたっぷり!
ピッツア橋本

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