Qちゃん

ストレンジャー〜上海の芥川龍之介〜A Stranger in ShanghaiのQちゃんのレビュー・感想・評価

3.8
NHK教育の深夜ドラマらしい、そもそもの独特なテーマに加えて、編集や構図、脚本などが面白い良作。

下敷きになった芥川龍之介の「上海遊記」は読んだことないが、たぶんその話の内容のみならず、当時の時代背景や微妙な日中関係の機微、垣間見える社会の変容への兆しなどを織り込みつつ描いている視点が興味深かった。

並居る美しき女優たちを差し置くぐらい美しかった男娼ルールーの一件が残酷だった。。

作家は勝手だな。人間をある意味美化して見すぎてる。観察の上にロマンチシズムで固めた物語を見出して、一切悪気なしにそれを押し付ける。当人たちの重すぎる事情や社会の深すぎる闇も現実も無視して、客観的に高潔な理想を語るだけ語って、不用意に火を燃え立たせて、無惨に散らせる。

芥川龍之介が自殺した理由というのは、恋愛絡みで個人的なものというイメージが強かった。ただ、今回の彼の経験の描かれ方や感じた事が一部でも事実とすると、
この世の中の退廃と、絶望と、今にも打ち砕かれそうなほど小さな希望の灯り、
そうした紛れもない現実を日本以上に大っぴらに見せつけていた当時の上海で目の当たりにしてしまった衝撃、
そして避けられないだろう日米間の戦争に向かう、希望のない世界への諦観。
それらが相まって、自殺を後押しした可能性も感じられた。

松田龍平、雰囲気あって好きな俳優ではあるんだが、私が観てきた作品では「御法度」以外全部同じに見える。。役というか、松田龍平、っていう。
「探偵はバーにいる」一緒にやってる大泉洋もそういうとこあるよね。

なんか、本作では特に演技が単調な気がして、いつもの松田龍平にしか見えなかった。芥川龍之介がこんな感じのボーッとして見えていつも一歩引いて人間観察してるタイプだったんだろうか。
Qちゃん

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