真田ピロシキ

このサイテーな世界の終わり シーズン1の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

4.5
厨二病なんてバカにされてしかるべき態度だ。なのに今の世の中にはリアルに厨二病的言動をしたがる人が見受けられる。例えば自殺した人のニュースに対して「死にたいなら誰にも迷惑かけないよう雪山にでも行って死ね」だとか世の理不尽に対して声を上げている人を「世の中そんな甘くねーんだよお花畑」と罵ったり。共通しているのは他者への思いやりがなさすぎてあまつさえそんな自分をcoolだとすら思っていそうなところだ。

本作の主人公ジェームスも感情を動かさない自称サイコパスで動物を殺したりしてていずれは人間を殺す妄想をしている。そんな時にクソッタレな家族から逃げたいと思っている同級生アリッサと出会いいつか殺そうと思いながら逃避行を続けている内に気付かされる。自分はサイコパスなんかじゃなかったと。このドラマは厨二病のガキだったジェームスが人を好きになり思いやれる大人へと成長していく物語。嫌っていた父親のことも含めて自分が狭い見方をしていたか知らされる。終わりを迎えるサイテーの世界とはジェームスの抱える厨二病セカイのことだ。同時にアリッサのここではないどこかへの逃避も終わる。そんなものは存在しないと苦い思いを味合わされて大人になって行く。

1話20分程度の短い尺でありながらその密度は1時間近くに比肩しうる。1シーズン10数話以上かけてやったらめったらキャストを増やして終わる見込みのない話を引きずり続けるアレとかアレより遥かに充実した時間。そして旅は確実に終わり続かない。続きは自分の中で消化されるものなのだ。