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ダーク シーズン3のBlueのレビュー・感想・評価

ダーク シーズン3(2020年製作のドラマ)
5.0
これは噂にたがわぬ傑作でした。これはもう満点です。

ロッテントマトというオーディエンス、批評家サイトがあって2020年度にNetflixで最も面白いドラマは何かという投票を行った際に、ストレンジャーシングス3や数多くの作品を抜いて圧倒的な支持率を集めて一位になったのがこのダークという作品でした。

このダークは新しいSFの型を作った作品と言っていい。今までにない新しいタイプのストーリー展開です。

シーズン2のレビューでドイツという国柄で考えた時に多くを喪失して時代を超えて新たな価値観を得て自己を保とうとしてるという事を書きました。でもそのあとにドイツに確固たる価値観があっただろうか?とふと考えてみました。そうするとこのドラマの主人公そのものがドイツという国そのものを表しているのではないかと気づきました。

ドイツは神聖ローマ帝国が崩壊してイギリスやフランスが強くなっていく一方で、多くの犠牲者を出したのちにプロイセンという小さな国を建国します。その後植民地争奪戦となってフランス、イギリス、スペイン、ロシアなどが他の地域を侵略し始めます。このままいけば大国同士が土地を巡り覇権争いをしてやがてヨーロッパ全土を巻き込んだ戦争に発展する事を懸念した宰相ビスマルクが仲介役を買ってでて他国の利害関係を調整しつつ、自国を守ろうとします。
しかしビスマルクが政界を去った後にドイツ自体も植民地の争奪戦に加わろうとしてこれが第一次世界大戦そして二次世界大戦の引き金をひくきっかけになるのです。

このドラマでは主人公が終末の未来を阻止しようと過去や未来に飛んでいきます。つまり終末の世界そのものが世界大戦後の世界であり、自己価値観がまだ定まっていない青年が主人公であるという事は、やっとプロイセンという国を建国して大国に翻弄されながら、価値観を醸成する事なくそのまま欲望に走ってしまうドイツそのものを表しているのでないかと思いました。

なぜなら終末の世界を引き起こすキッカケは彼自身にあるから。これは日本人にも通ずるところがあるなと思いながら見ました。

新たなストーリー展開を生み出しているこのドラマに興奮しながらも、一方でこのドラマを俯瞰して冷静に見ている自分がいました。このドラマはどこに行くのか。

ドラマ自体はシーズン3のエピソード5で完全に訳がわからなくなりました。でもこのドラマの良い点はわからなくても悲劇を抑えることができればリセットされるという事がわかっている点です。
そして見事にストーリーを収束できたと思います。
五年前にあまりに子育てと仕事が忙しくて見る暇がなくてNetflixは一度解約したのですが、三体というベストセラー小説をNetflixがドラマ化する事がわかり、あらためて契約しました。
三体は今まで読んできた本の中でも5本の指に入る面白さで、SFとしてもヒューマンドラマとしても新たな価値観を持ち込んだ作品だと思うし、Netflixで視聴されれば確実に世の中の価値観にも影響があると思います。


かつて2001年宇宙の旅の神話のようなストーリーがスターウォーズやDUNEという映画/小説を生み出すキッカケになります。そこからSFの世界は急速に発展していき、ほぼ同時代にガンダムやウルトラマンをはじめ続々フォローする作品が生まれつつ、影響を受けた人々が科学者や技術者の道を志し、新たな産業を生み出してそれは私達の生活にも染み込んでいます。
三体を読み終えた時に、ついに2001年宇宙の旅に匹敵するような作品が現れたと思いました。長い年月を経てSFやヒューマンドラマは更新されていくと実感しています。
そしてほぼ同時期にこのダークという作品が生み出された事は、一つの時代が終わり新たな時代が始まったその最初の作品のような気がします。

時代の変わり目に立ち会える事にとても嬉しく思いつつ、このドラマのラストはとても印象的でした。
この作品はドイツという国の歴史があってこそ生まれた作品だと言っていい。それは自己を確立するために懸命にもがき、苦しんだ結果に産み落とされた作品だと思います。

二つの視点でこの物語を追うと、完璧にカップリングします。素晴らしかった。
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