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パレートの誤算 ~ケースワーカー殺人事件のkuuのレビュー・感想・評価

3.5
『パレートの誤算』

WOWOW『連続ドラマW』で2020年3月7日から4月4日まで全5回で放送され、Netflixでも視聴出来ました。

柚月裕子による日本の長編ミステリ小説が原作。
殺されたケースワーカーの素顔と不正受給の実態。
殺人に隠された社会保障の闇と新たなる希望を描き出す橋本愛主演によるヒューマンミステリー。
他の出演者には、増田貴久、北村有起哉、松本まりか、和田正人、冨手麻妙、那須雄登(美 少年/ジャニーズJr.)、吉田芽吹、小市慢太郎、西田尚美、尾美としのり等

あらすじは、
市役所の福祉課に勤める牧野聡美は、生活保護利用者と直接向き合うケースワーカーを命じられる。不安な聡美をベテランの山川は励ましてくれた。
同僚の小野寺淳一とともに迷いながらも利用者と向き合っていく聡美。
ところが、山川があるアパートの火事跡から他殺体で発見される。山川が何らかの不正に関わっていたという疑念が膨らむ中、聡美と小野寺は、町を覆う不正の影と生活保護をめぐる人々の人生模様に巻き込まれていく。。。

『孤狼の血』とかで知られる、やるね~ぇ柚月裕子の原作の小説を、元タレントの上岡龍太郎氏の子でもあることでも知られる小林聖太郎氏のメガホンを取った今作品。
タイトルにある“パレート”は、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見した冪乗則、パレートの法則からきてて、この法則は、
全体の数値の8割は、全体を構成する要素のうちの2割の要素が生み出しているちゅう経験則のことです。
蜂や蟻で例えられるかな。
本作品が生活保護をプロットにしているさかいに、その辺りを絡めて、タイトルの『パレートの誤算』としたと推測します。
民放じゃあまり扱わない問題、生活保護をクローズアップするとこは、流石WOWOWやなぁと感じました。
ただ、生活保護の生々しい描写があったのは始めの方くらいで、その後はサスペンス感が色濃く出た事件もの作品でした。
個人的には興味ある問題だけに嵌まりました。
このコロナ禍も加速の原因のひとつやろけど、年々、生活保護費が膨れ上がっているのは事実やろと思う。
心身の不調でやむを得ず生活保護を利用している人たちがほとんどの中、働く気などなく生活保護費を頼りに堕落した生活を送る人も少なからず存在してるとは思う。
そないな問題点を目の当たりにした主人公の目線の実態を描き出す序盤は巧いなぁと思った。
ただ、その後は無理がある展開が多々あったんは否めないのは残念の点です。
でもまぁ、WOWOWやなかったらこないなテーマを扱い描く事は今んところ無さそうやし、やるやんWOWOWってのはかわりないかな。
また、生活保護システムの矛盾や、生活保護システムの知識のない職員ががむしゃらに学び、支えている現実を、橋本愛が懸命に演じてるのも善かったかな。
ただ、もう少しふみこんで、エグってほしかったかな。
個人的には5話完結やったし、サクッと見れ考えさせられた作品でした。
嗚呼、取り留めない事ですが、今作品を見て、ふと一部の政治家や著名人が提唱する『ベーシックインカム(BIと略します)』を思ったので徒然に書き進めますが。
BIてのは政府がすべての国民に、一定の現金を定期的に支給する制度で、これが現実したら今作品の諸々の事件事故は多少なりとも起こらへんのになぁと思ったかな。
このBIは一見すると夢みたいな制度やけど、実現するには、社会保障制度の廃止や増税も考えられる。
せやけど、BIの研究し推進派の経済学者たちの考えには理もある。BIは、ただお金を配る制度ではなく、社会全体が豊かになり、すべての人が生きやすくなるための制度だと彼らは謳う。
今作品を見たり、聞いたりした知識で誤りもあるとは思いますが、日本において、いや、多くの先進国の今ある社会保障制度は、基本的に申請主義と云える。
制度に関する資料を読み解いたり、窓口に問い合わせたりするってこと、考えただけでも一定のハードルがあると推測できるし、申請すること自体が困難な人が多くいる。
『困っている人だけにゼニを配ればエエ』ちゅう考え方もあるけど、そもそも1億2,580万人以上いる国民の中から
“マジに困っとる人”
を画一的に定義しようとすること自体に無理があるのも事実。
現実にはまだまだハードルが高そうやけど、マイナンバーと銀行口座を紐付けて、申請なしですべての人に一律でお金を配るほうが取りこぼしもなく、自治体の行政コストも少なくて済み、景気を活性化させる効果も見込めるのは確か。
0歳の子どもから配ることで少子化対策の一助になるとも云える。
せやけど、一方ではBI導入による主なデメリットも考えにられる。
一律給付やと労働意欲が失われ、労働者不足になる可能性や、過剰消費が起こり、供給者が不足する可能性の2点は大きい。
どちらも物価上昇(インフレ)につながる要因やけど、これらは程度問題として捉えるべき点やとも云える。
BIの副作用は総じてインフレという形で現れる。
鯔のつまり、インフレを起こさへん程度の給付額やったら、BIは持続可能とも云える。
また、インフレの可能性は、長らくデフレ不況に悩まされている今の日本にとって、むしろデフレから脱却する突破口になるかもしれへん。
日銀は2013年からインフレ率2%の目標を掲げとるが、コロナ禍の影響もあり、いまだに到達できてへん。
BIで直接お金を配ることでしか、長引く不況から脱却する方法はないんちゃうかとも思う。
最低限の暮らしを支えるためのBIの現実的な案として、毎月7万円ちゅう金額を出すことが多い。
たとえば毎月30万円の支給額だと仕事を続ける人は大きく減るかもしれへんが、毎月7万円なら給付金に頼り仕事を辞めるという人は少ないと思う。
また、働いて得た収入に応じて給付額が減る生活保護と比較すっと、BIは働く意欲を消耗させにくい制度といえるのんちゃうかな。
また、財源の問題もあるやろなぁ。
BI導入の初期段階として提唱するのは、税金ではなく国債発行を財源とする固定BIと、
既存の社会保障制度に上乗せする追加型を組み合わせる方法。
そして、固定BIの財源を徐々に税金に置き換えていく。
ゆくゆくは固定BIと変動BIの二段構えの運用にし、既存の社会保障を整理して中間型を目指す方法が最善かとは思う。
固定BIの目的は再分配で、変動BIの目的は景気対策と云える。
固定BIだけやと、中間層から高所得者にとって得はないかもしれへんが、変動BIと組み合わせることで経済全体が活性化することにつなる。
国債=国の借金と云う考え、国債を財源にすることを不安に思う。しかし、経済学においては自国通貨建ての債券を返せなくなり、財政破綻することはないという意見もある。
自国通貨がある国は、最終的に中央銀行が国債を買い上げることができるからやと。
そのため、国債を発行しすぎて財政破綻する心配はないというのベーシックインカム推進派の意見。
現在、景気対策の一環として日銀は国債だけではなく企業のETF(上場投資信託)を買ってる。
否定するわけやないけど、日銀ちゅう公的機関が民間の金融市場に踏み込んでしまっているのは、ある意味で貨幣制度全体のゆがみと云える。
それやったら、シンプルに国民全員にお金を配りましょうというのが変動BIなんかな。
日銀が直接国民にお金を配って景気とインフレ率をコントロールする。
こないして貨幣制度のゆがみまで含め、トータル的に制度を考えていく、すべての人の幸せにつながるとはいえ、固定BIが導入されて増税になれば、結局は中間層以上にしわ寄せがくるちゅう懸念もうまれる。
マクロ視点で考えるとそういった心配はないかな。
みんながみんな得をする政策があるのか?
固定BIでも変動BIでも、トータルでは景気を活性化することにつながるのはたしかで、BIの導入によって、子育て世帯は安心して子を産み育てられるようになる。
若者はリスクをとって冒険できるようになる。
社会人は転職しやすくなるため、つらい仕事を無理に続ける必要もなくなる。
給付による心の余裕が社会全体の閉塞感をなくし、すべての人の幸せにつながると。
良いことにつながりそうやけど、その反面、人は心が弱いねんなぁ。
人の多くは少しゼニもらったぐらいやと働くことを辞められへん。
何か働いてへんと、自分のアイデンティティが揺らいじゃうとか、何か働いてへんと世の中とか社会に対する責任を果たしてへんみたいに、未だに日本人は思ってる。本当に重要なのは、働いたり、お金を稼いだりしなくても、特に気にせず自信を持って生きていけるような人間をどう作るかなんやろけど。それを実現するための、ベーシックインカムというのはあんまり役に立たないんちゃうかとも思う。
でも、今作品の事件や事故はこのベーシックインカムならある程度抑止されるんはたしかちゃうかなぁと、何を書いてるんか小生自身分からようになりましたが、兎に角、こないなことをふと、思いました。
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