HAL

逃げるは恥だが役に立つのHALのレビュー・感想・評価

逃げるは恥だが役に立つ(2016年製作のドラマ)
4.4
「それは、「好き」の搾取です。」
こんな台詞をヒロインに言わせるドラマがあっただろうか。あったのかもしれないが、これが国民的作品として受け入れられたことの喜ばしさとそれでもなおオリンピック関連で浮かび上がる女性蔑視の現状がおぞましく感じる。

みくりは妄想家としてコメディチックに描かれるが、それは時として理不尽な現状と向き合うためのシミュレーションであり、分析であり、理知的な戦いなのだと思う。そしてまた有害な男らしさに抑圧されてきた平匡もまた、ある種の草食系男子のような弱さやかわいらしさと共に描かれているが、冒頭の台詞が放たれる10話クライマックスにおいて彼は驚くほど無意識男性優位社会に身を任せたまま「結婚」という制度を利用しようとする(この場面は「制度に乗っ取られている」ようにすら見える)。

しかしこのドラマにおける戦う主体はやはりみくりであり、このドラマにおける男性は自身の持つ男性性を一度解体し、女性と共に進もうとする。忘れていた頃に冷や水を浴びせるような10話の展開にびっくりしたし、「結婚」にも「恋」にも流されずに踏みとどまり、自身の言葉で戦おうとするみくりの姿(とフルコーラスのエンドロール!)が異様に感動だった。

ただ、あえて書いておくんですけど、たまたまこのドラマを僕が『大豆田とわこ』と並行して観ていて、そのせいでちょっと(特に最終回あたりは)あまり集中できていなかったような気もしてます。もう少しして落ち着いたら新春スペシャルも観たい。
HAL

HAL