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有村架純の撮休のtetsuのレビュー・感想・評価

有村架純の撮休(2020年製作のドラマ)
4.5
豪華な監督陣と主演・有村架純さんのコラボレーションが気になり、鑑賞。

[概要]

国民的女優・有村架純さんの撮休を題材に、豪華監督陣が手がけたオムニバスドラマ。(24~42分×8話)


[感想]

「最高」が過ぎたドラマ。
有村架純さんと言えば、個人的には、『ビリギャル』、『劇場版 そして、生きる。』の名演が印象深かった女優だけれど、今回のドラマで、さらに、株が爆上がり。今後、応援したい若手女優の第1位に登りつめた。笑


[各話感想]

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第1話
『ただいまの後に』

[ゲスト]
風吹ジュン、満島真之介

[監督]
是枝裕和

[脚本]
比嘉さくら

[あらすじ]
突然の撮休で里帰りを決行した有村架純。
父に先立たれ、母が一人暮らしをしている実家に帰宅した彼女だったが、ある男性が家を訪ねてきて……。

[感想]

平穏な母娘の関係性がジワジワと崩壊し、絶妙な着地を迎える展開が見事な一作。
あえて受け手に考える余地を与えた脚本の巧さ、「避けられない血の繋がり」を描いた内容など、TVドラマの枠組みを越えた重厚な家族ドラマに圧倒された。
「隠れる少年と厳しそうな父」という冒頭の1コマは印象的で、これこそが本作のテーマ「避けられない血の繋がり」を強調しているようにも感じたり。
そんなテーマをよく考えると、本作の物語には、是枝監督が繰り返し描いているテーマが根底に流れているような気がした。

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第2話
『女ともだち』

[ゲスト]
伊藤沙莉、若葉竜也

[監督]
今泉力哉

[脚本]
ペヤンヌマキ

[あらすじ]
親友の優子と家で過ごす有村架純。
彼女から彼氏を紹介された架純は、つい、攻撃的な態度をとってしまい……。

[感想]
前回と打って変わって、リアルな空気感が最高な回。
短時間ながらも、しっかりと今泉力哉作品になっており、監督のファンとしては、最初から最後まで微笑んでしまった。
ざっくり言うならば、『ブックスマート』のようなシスターフッドものともいえるが、そんな中に、しれっと「女性らしさについて」を内包した物語が興味深かった。実は、さっぱりした性格の有村架純さんという描写や親友・伊藤沙莉さんとのリアルすぎる会話シーン(アドリブっぽいセリフも)、なんといっても、私的今泉作品最高傑作『街の上で』の若葉竜也さんが、真逆の役柄を見事に演じきっていたところが良かった。


参考

"カスミナミ" を YouTube で見る
https://youtube.com/playlist?list=PLNLIASpko377mvv9HPkRvEZTnMj61JBoY 
(有村架純さんと浜辺美波さんが共演するJA共済のコチラのCMシリーズも今泉監督作品とのこと。最高だな……。笑)

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第3話
『人間ドック』

[ゲスト]
笠松将、リリー・フランキー

[監督]
是枝裕和

[脚本]
砂田麻美

[あらすじ]
人間ドックにやって来た有村架純。
そこで、かつて仕事を共にした映画監督や、とある人物に出会い……。

[感想]

同じ監督でも、ここまで違うのかと思わされた2度目の是枝監督回。
脚本家が変わるだけで、ここまで「艶めかしさ」が強調されることになるとは……。(エコーの準備音あそこまで鳴る?笑)
リリー・フランキー演じる"汚れた大人"と笠松将演じる"同級生"の対比。
上京し、都会の息苦しさで押しつぶされそうな主人公に訪れた奇跡。
それらの要素が、必然として回収されるラストに温かな気持ちが残った。

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第4話
『死ぬほど寝てやろう』

[ゲスト]
柳楽優弥

[監督]
山岸聖太

[脚本]
篠原誠

[あらすじ]
自宅の棚に並べられた無数のノートとカセットテープ。
「演じる」プロフェッショナル・有村架純が過ごす休日とは……。

[感想]
これまでの中では、最もクセが強かった異色SF回。
イメージトレーニングから「演じること」を学ぶ有村さんの妄想と、夢か現実か分からない不思議な展開。
ホラーチックな要素も含めて、展開が予想できない回だった。

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第5話
『ふた』

[ゲスト]
蒼井旬、水野哲志

[監督]
横浜聡子

[脚本]
ふじきみつ彦

[あらすじ]
ふたが開かない有村架純。
何とか解決しようと、家を飛び出した彼女だったが……。

[感想]

コメディセンスにあまりにもクセがありすぎて、未だによく分からなかった回。笑
横浜聡子監督の作品を追ったのち、改めて観たいところ。

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第6話
『好きだから不安』

[ゲスト]
渡辺大知、徳永えり

[監督・脚本]
今泉力哉

[あらすじ]
彼氏と幸せな休日を過ごすことにした有村架純。
しかし、彼に届いた元カノの結婚式の招待状が、思わぬ事態を巻き起こすことに……。

[感想]
これこそ完全な今泉作品。
不安を抱えるあまり、神経質になってしまう有村さんと、そこに合わせようとする渡辺さんの関係性の面白さ。
さらには、『恋のツキ』での共演も印象深かった渡辺さん×徳永さんコンビの安定感が素晴らしかった。
主人公の精神が基本的に不安定なため、かえって、周りの人物がカッコよく見えるシーンが際立っていた。
また、序盤の長回し会話シーンや、『サッドティー』にも通ずるクライマックスの車内シーンは、いかにも今泉監督作品だなぁ~と。

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第7話
『母になる(仮)』

[ゲスト]
福島星蘭

[監督・脚本]
津野愛

[あらすじ]


[感想]
有村さんと少女の関係性が永遠に尊い神回。
些細なセリフの回収や、受け手に人物の背景を想像させるような巧みなセリフ、主人公の練習する脚本がリンクする内容といい、脚本が素晴らしすぎた。
役者としての壁にぶち当たった時、束の間の経験が、問題解決の糸口へと繋がる様子が丁寧に描かれていて、良かった。
そして、有村さんに匹敵する名演を残した子役・福島星蘭ちゃんが本作のMVPでもあった。

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第8話
『バッティングセンターで待ちわびるのは』

[ゲスト]
前野健太、田村健太郎

[監督]
山岸聖太

[脚本]
三浦直之

[あらすじ]
バッティングセンターにやって来た有村架純。
なかなか、上手くボールを打つことが出来ない彼女に、ある男性が助言をし始めて……。

[感想]
待てない女「有村架純」と、待つ男の出会いが、お互いを成長させていく展開が見事。
ワンシチュエーションながら、会話シーンの微笑ましさによって、楽しく観ることが出来る名作回。
片方に寄らず、双方を尊重し、より味わい深い結論をもたらしたラストシーンが最高だった。

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