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鎌倉殿の13人のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

鎌倉殿の13人(2022年製作のドラマ)
5.0
平家隆盛の世、北条義時(小栗旬)は伊豆の弱小豪族の次男坊に過ぎなかった。
だが流罪人・源頼朝(大泉洋)と姉・政子(小池栄子)の結婚をきっかけに、運命の歯車は回り始める。
1180年、頼朝は関東武士団を結集し平家に反旗を翻した。
北条一門はこの無謀な大博打ばくちに乗った。頼朝第一の側近となった義時は決死の政治工作を行い、遂には平家一門を打ち破る。
幕府を開き将軍となった頼朝。だがその絶頂のとき、彼は謎の死を遂げた。
偉大な父を超えようともがき苦しむ二代将軍・頼家(金子大地)。
“飾り”に徹して命をつなごうとする三代将軍・実朝(柿澤勇人)。
将軍の首は義時と御家人たちの間のパワーゲームの中で挿すげ替えられていく。
義時は、二人の将軍の叔父として懸命に幕府の舵かじを取る。源氏の正統が途絶えたとき、北条氏は幕府の頂点にいた。
都では後鳥羽上皇(尾上松也)が義時討伐の兵を挙げる。武家政権の命運を賭け、義時は最後の決戦に挑んだ──。
三谷幸喜、3度目の大河ドラマ。

伊豆の小さな豪族である北条氏の次男坊、北条義時が、平家を追討して、武士の世を建てるべく源頼朝の腹心として、平家との戦いや鎌倉幕府の権力固めの為に壮絶なパワーゲームに巻き込まれる展開を、前半部分は最強を誇る平家に挑む為に兵の数も味方の豪族も少ない中でどのように味方の豪族を増やすか兵の数が少ないハンディがある中でどのように勝ちを重ねていくか源頼朝や北条義時などが奮闘していく「ブレイブ・ハート」などの前半を彷彿とさせるリベンジものの熱い展開で、上総広常(佐藤浩市)などの有力な御家人を味方につけていくくだりは北条義時や源頼朝と上総広常たち豪族の「武士の世を作る」という志を共有する者たちの主従を超えた絆や友情があり、爽やかな青春ものの色彩がある痛快な展開だった。
だが、上総広常を粛正したことに始まる粛正の嵐は、最終回のある男の死まで止まなかった血で血を洗う展開は、上総広常や畠山重忠(中川大輔)や和田義盛(横田栄司)や源義経(菅田将暉)たちを前もって充分魅力的に描いた後に志半ばで命を散らすという、ファンの気持ちを削り込みに掛かる展開が連続したため、SNSでは「全部、大泉のせい」などのハッシュタグが流行るくらい「ゴッドファーザー」のような仁義なきパワーゲームが展開し、主役が悪役化していくという前代未聞の展開となって、義時の権力による圧制ではなく団結融和を説く北条泰時(坂口健太郎)や北条政子がヒーロー的役割を担い、義時と泰時たちのせめぎ合いがユニークだった。
また面倒見よすぎる北条時政(坂東彌十郎)たち北条家の家族同士の、時にぶつかり合い時に力を合わせる、北条家のホームドラマとしての軸がしっかりしていて、家族同士のような遠慮なしの掛け合いも毎回ユーモラスだった。
八重(新垣結衣)や比奈(堀田真由)や亀の前(江口のりこ)や静御前(石橋静河)などの乱世に翻弄されながらも、自らの意思で自分の道を切り開き時に健気に時にしたたかに生きるヒロインたちも、男女問わず憧れられるくらい魅力的だった。
承久の乱の後の北条義時の結末は、「のえの方の毒殺説」などを組み合わせつつ、北条義時が積み重ねた業がこんな形で帰ってくるのかという、まるでサスペンスドラマのラストのような寂寥感と、北条泰時が法による政治を行う希望が相まって、驚かされるラストになっていた。
従来のイメージと違いより魅力的な源頼朝や源義経や北条政子などのキャラクター造形、小栗旬を始めとする演技派俳優のセッションのライブ感とアンサンブルに、最後まで夢中にさせられた大河ドラマだった。
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