真田ピロシキ

梨泰院クラスの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

梨泰院クラス(2020年製作のドラマ)
3.9
信念と気合の人 パク・セロイによる大財閥長家(チャンガ)ファミリーへの復讐劇。序盤から結構気になってたのはとても強大な敵を目標にしながらセロイに具体的に闘うプランがなさそうに見えた所だ。第一歩であるタンバムからして閑古鳥が泣いてて、たまたまとても有能なイソと縁ができなければなす術もなく潰れていそうだった。そういう意味ではセロイが優秀にはあまり見えないのだが、セロイの強さは諦めない少しずつでも先に進める事。また、その過程で仲間を切り捨てない人間の大きさがあって、そのために皆が信頼して力を発揮させるのが強み。初期のワンピースでルフィが剣も使えないし料理も作れないと言ってたのを思い出した。セロイ=ルフィ説。日本でも受けがいいのが頷ける。

憎き仇の長家はラスボスであるチャン・デヒ会長のキャラクターが素晴らしい。敵ではあるが刑務所に入ってた頃のセロイが会長の自伝を熟読してて、ある意味では師匠であるという熱血少年漫画のような展開。末期癌で余命僅かと診断された時には「天罰なんて冗談じゃない。罰は僕が下す」と言って檄を飛ばしてて強敵と書いてともと呼びそうな雰囲気すらあり、ますます少年漫画感が強まる。最終回の土下座バトルで幻滅するのにもこの2人の関係の深さを改めて印象付けられた。それに対して息子のグンウォンはどうしようもないバカ雑魚。北斗の拳のモヒカンレベル。何度もオウンゴールを放つセロイ勝利最大の貢献者。あまりにアホすぎて途中同情すら覚えた程。最後にはザマあ見やがれという思いだが、最終話までこんな小者に振り回されたのはちょっとな。一番悪いのはコイツなので会長は土下座で許したげても良くない?と思いもしたのだけれど、そんな甘さは許されなかった。家族のエピソードとかあると情状酌量をしそうに感じるじゃないですか。この辺は財閥に対する韓国一般市民の感情があるのかな。

グンウォンのオウンゴールは奴の愚かさだとしてもちょっと都合が良過ぎるように思った点が少しある。セロイより料理が下手だったヒョニが少し猛特訓をしただけで全国一の名店として認められたり、トニーの探してる家族がたまたま移転したタンバムの顔馴染みでしかも大金持ちなどドラマとは言っても話が出来すぎている。

このドラマは復讐と成り上がりの他に恋愛も大きな要素。セロイが高校生の時から好きなスアであるがどうもこのキャラクターは受け身すぎて好ましく思えない。どう見てもイソの方が視聴者受けしそうに見えるのにセロイが一途すぎてイソフラグが立ちそうになく、イソの方は悪い言い方をするとグンスと余り者でくっつけられそうな気配があって大丈夫かと思ってた。でもそこも納得のいくように収拾してくれて、終わってみれば恋愛パートもスリリングに見れて良かった。イソを演じるのはスタイリッシュアクション映画『The Witch 魔女 』で主役だったキム・ダミであっちのスーパーヒロインぶりにはついていけなかったが、こっちもちょい中二入っていながら素直に好感の持てるキャラクターしてる。標準的な美人顔してるスアに比べると何かふっくらしてるように演出されているのだけれど、それがまた多様な街 梨泰院の魅力を体現したようにも思えた。多様性の表現として欲を言えば、ヒョニのトランスジェンダーはあれで良かったと思うけれど、トニーのアイデンティティは親族を見つけただけで掘り下げが少なかったかなと。熱いドラマだったが惜しい所もありました。