月見

カルテットの月見のレビュー・感想・評価

カルテット(2017年製作のドラマ)
4.6
ああ面白かった。
この人の脚本の面白さって次の3つにあると思う

①会話のセンスが素敵
とにかく会話のセンスが凄いよね。

・人を好きになるって勝手にこぼれることでしょ
・もう話さなくていい。今信じて欲しいか信じて欲しくないかそれだけ言って。
・私の弾く音楽は全部灰色になる
・居なくなるってことは、居ないってことが続くこと

そんな台詞思い浮かびます?
言葉選びが秀逸で、その人が発する言葉によってこれほどまでにその人の本質、どう生きてきたかその人の人生が垣間見えるのかと、そして良くも悪くも言葉によって人を動かすことが出来るんだと、そう思える。

そんな中で逆に巻のリビングでの最後の別れの言葉はどれも薄っぺらくて、本編ではそれに触れてなかったけど、真紀はそんなもんかと別れの決意を固めたんだとも思った。
相手役を同じく天才脚本家のクドカンをサプライズ的に使うキャスティングも面白かった

②ユーモア
・巻真紀(まきまき)って名前
・谷間さんって言っちゃう→上着来てくる
・声ちっせー!
・同時に喋るから全然聞こえない
・腕がノースリーブになっちゃう
・雪山で足を滑らせた時何故かピーンと気を付けになっちゃう
・人の説教聞かないでこっそり飯食べまくる
・から揚げにレモンかけるかけない論争
などなど。
細かい所のユーモアがうけるよねぇ。誰もが“あるかも”って思うことを急にブッこんでくる。よく思い付くよなあ。
レモンをから揚げにかける件なんて、面白いだけでなく真面目な話の伏線に使っちゃうのがなんともお洒落。

③人生の機微
どんなに強がったり、着飾ったりしても結局本能や欲望には逆らえない人の弱さみたいな微妙な感情をよく表現出来ててハッとする。

自分は昔から“泣きのツボ”があって、それは「泣きながらご飯を食べるシーン」なんだけど(想像するだけで今もウルッとくる)、どんなに辛くても、本能的に「生きよう」としてしまう人間の「欲望に抗えない切なさ」があって、だから三話の「泣きながらご飯食べたことある人は生きていけます」にはグッときた。

人間の微妙な感情を知る量が膨大なのと、それを表現しちゃうのが上手すぎ。
こんな面白いドラマをスルーしていたなんて…。当時話題作だったと思うが、掘り出し物を発掘した気分になりました。
月見

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