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カルテットのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

カルテット(2017年製作のドラマ)
5.0
それぞれ弦楽器をたしなむアマチュア演奏家の30代男女4人は、ある日練習していた東京のカラオケボックスで偶然出会い、弦楽四重奏のカルテット「ドーナツホール」(以下QDHと表記)を結成する。元プロ演奏家で現在は専業主婦の巻真紀(松たか子)、高名な音楽家を祖父に持ちサラリーマンをしている別府司(松田龍平)、路上演奏をするチェリストの世吹すずめ(満島ひかり)、フリーターの家森諭高(高橋一生)の4人は、それぞれ演奏家としての夢を諦めきれない者たちだった。4人は司の祖父が所有する軽井沢の別荘で、週末を中心にひと冬の共同生活を送り、練習を重ね人前での演奏を目指す。その中で、4人が抱えている秘密や過去が、明らかになっていく。
「全員片思いで嘘つき」なラブサスペンスドラマ。
まずは、このドラマが「行間案件」であること。つまり、あるキャラクターのあるセリフがあるキャラクターの過去や秘密を炙り出す伏線になっていたり、目線を合わせたり目配せしたりする目線の芝居がセリフの奥にあるキャラクターの本音や秘密を炙り出すキーになっている。例えば、夕食の時に出た唐揚げに無断でレモンをかけたのを家森が抗議するシーンが、真紀の夫の失踪の一因につながっていたり、真紀を内偵し始めた時と真紀に友情を感じ始めた時のすずめの目線の変化、真紀の本音を引き出そうと核心をつく問い詰め方をする有朱と真紀を守るすずめの目線と言葉のせめぎ合いが繰り広げられる第5話のシーンなどが、サスペンスフルな人間関係で惹き込まれる。
司は真紀を、すずめは司を、家森はすずめを片思いしていながら、片思いを成就させるより4人の絆を優先させるラブコメディが「みぞみぞ」(切なくキュンキュン)させられた。
夫殺しの疑惑をかけられさらに大きい秘密を抱えた真紀、父親に超能力詐欺に加担させられたすずめ、真紀に長年片思いしている司、こだわりが強くフリーター生活を続けている家森と世間のレールから外れた生き方をしてきたすねに傷を持つ4人の、「お互いのダメなところでつながって許し合っている」家族のような強い絆にほっこり癒された。
名セリフも多く、「泣きながらご飯を食べたことがある人は、生きていけます」「夫婦とは、別れられる家族」「社会人失格の自覚持って精一杯全力出して演奏するふりしましょう」「サンキュー、パセリ」など、幸福と不幸を繰り返し生きていく力を得られる名セリフばかり。
特に真紀がすずめを迎えに行き説得する第5話、真紀の夫が失踪した理由が明らかになる第6話と7話、すずめの司に対する片思いと真紀に対する友情が切なく溢れる第8話、4人がカルテットの夢を「やりたいことを職業にするか、趣味にするか?」の決断する最終回前後編の展開は、「みぞみぞ」(ざわざわ切なく)させられた。ドーナツの穴や煙や唐揚げのパセリのように顧みられることがなく間違いを犯したりレールから外れたり夢を叶えられない普通の人々に対する優しい目線が織り込まれ、松たか子、松田龍平、満島ひかり、高橋一生の演技派俳優のカルテットの演奏のような絶妙なアンサンブル、魔性の女ぶりが絶妙な吉岡里帆やもたいまさこの存在感も良く、白黒付けなくてもグレーで生きている酸いも甘いも味わった人の本格的な大人のドラマを楽しめた。
「サンキュー、パセリ」