SANUKIAQUA

愛の不時着のSANUKIAQUAのネタバレレビュー・内容・結末

愛の不時着(2019年製作のドラマ)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

一話が普通のドラマよりずっと長いんだけど
濃密で話の繋ぎ方が巧みで長さを感じず
毎回話の終わりに画面が凍りつくと
えぇー!?ってなってのけぞり
結局次の話も見てしまい時間は深夜…
最後までドキドキハラハラ楽しめました。
ものすごく練られて作られた印象があります。

ロミオとジュリエット的な話ですが
ロミオは不器用で愛想悪いし
ジュリエットは肉食系で遠慮なしだし
その設定が面白く、また微妙な
北朝鮮と韓国の関係性を生かしたのが
凄いことだと思います。
色々と配慮しながらバランスを取って
描いているんでしょう。
元々同じ民族で文化だったのに
政治的な問題で大きく方向性が違った
二つの国と人々の対比が効果的でした。
こういう関係性の国って他に中々ないような。
実際に北朝鮮出身者にアドバイスを受けて
作っているそうなので丁寧に
配慮されているのでしょう。

前半の北朝鮮編での出来事が
後半の韓国編でリバースされるような
展開にもなっていて全話の構成が見事でした。
サスペンスとコメディ、ラブロマンス、
そして心温まるエピソードのバランスが
ちょうどいい。
話だけでなく人物や生活風習なども
対比することが面白さにつながり
またそれだからこそ共通する部分も光る
のだと思います。
互いを身を挺して守ろうと銃弾を受けることと
母親の思いがその最たる例かな。
セリが北朝鮮へ、
ジョンヒョクたちが韓国へ行くことは
どこかタイムスリップ的な感じがあり
特にセリが北にいる間は、
素朴な暮らし、人との信頼関係について
かつて韓国もそうだったでしょ?と
語りかけているようでした。
セリの兄弟夫婦が象徴的にクズなだけに。
7人の小人ならぬ5人の小人のような
韓国編での隊員たちのエピソードは
別ドラマにできるんじゃないか
というくらい面白かったです。

連続ドラマならではの良さは
しっかりと時間をかけられること。
セリとジョンヒョクの二人のことだけでなく
北朝鮮の部隊の隊員たちや村の女性たち
また、ダンとスンジュンの関係など
簡単にくっつけるのでなく
疑心暗鬼にならざるを得ない環境下にある
ことも含めて
見ている側が、登場人物たちの心の距離が
少しずつ縮まっていくのを言葉でなく
表現や空気感で感じることができました。

財閥令嬢でワンマン社長…
ナッツ姫を思い浮かべましたが
北朝鮮に行ってからの
ヒロインのセリの言動がいちいち面白いので
嫌味なく見ることができました。
またジョンヒョクはクールでカッコいい時と
ポカーんとしたり嫉妬したりした時の
ギャップが面白くて、これは女性はやられる。
それと二人ともスタイルがいいので
何着てもキマリますね。

中盤で二人の思いが重なるので
それまでのやりとりの面白さは一気に
ロマンティックに向いていくけれど
代わりにダンとスンジュンの恋愛模様が
俄然気になり始めます。
シリアスになりすぎないように
北朝鮮の村の女性たちを絡めたり
見ている側を飽きさせません。
ダンとスンジュンの恋愛は
セリとジョンヒョクとは
違った良さがあります。
ダンが豪快に酔い潰れたり
ベッドでスンジュンからの電話を
なんとなく待っている風だったり
一番良かったのは眠るダンに当たる朝日を
スンジュンが手で遮るシーンです。
むしろこちらの方が惹かれる部分であり、
結末だけが…

憎たらしい北朝鮮の少佐とスンジュンは
共に恵まれない少年時代を送っています。
市場で二度出てきた浮浪少年。
彼はセリに食べ物をもらい、
助けたスンジュンにお金をもらった。
ものというより、大人の優しさや
助けたら助けられることを知った少年が
少佐やスンジュンのような育ち方はしていかない
そう思いました。

一人ひとりの人物像をしっかり作り、
ピアノ曲や本、苗、肉、いろんな小道具が
これでもかと効いてます。
脇役たちが、いい味出してるから
面白いんだと思います。

最後どう決着させるんだろうかと
ずっと考えていましたが
なるほど、そういう選択もあるのか
と思いました。
忘れた頃に見直すと
また違った発見があるかもしれません。
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