こたつむり

新参者のこたつむりのレビュー・感想・評価

新参者(2010年製作のドラマ)
3.5
阿部寛さんと言えば《上田次郎》。
そんな連想をする人が全国に一千万人はいると思いますが…本作はそれを上書きしてくれる作品でした。というか、やっぱり素敵な役者さんですね。もう、好き。

正直なところ、演技の幅は狭いと思います。
というか「役柄よりも御本人の魅力のほうが先立つため、どの笑顔も《上田次郎》っぽくなる」のが正確な言い回し。これは仕方がない話です。

でも、本作は脚本(原作)が見事でした。
日本橋を舞台にした物語ですが「江戸っ子の気質は面倒くさいなあ」と思わせる下町っぽさを端緒とし、世界観の中にググっと惹き込む辣腕が冴える筆致なんです。

しかも、主軸は“親子の情”。
題材からして鉄板です。どんな形であっても親は子供を思うもの…なんて原理原則を丁寧に描けば、ワンパターンでも涙腺が弛むのは当然なのです。

それに、出演者は実力者ばかりですからね。
市原悦子さんや、倍賞美津子さんなんて、完全に街(というか舞台となる店舗)に馴染んでいる始末。そこに住んでいる…と言われても不思議ではない存在感でした。

また、適度なコメディ感も一服の清涼剤。
特に木村祐一さんの配役に顕著です。ぶっちゃけた話、捜査指揮を執る刑事には相応しくないんですけどね。でも、臓腑が重くなりすぎると涙も乾くわけで。何事もバランスが大切なのです。

ちなみに愚息のツボは“ぬぼっ”と現れる主人公。エピソードごとに違う演出が良かったのでしょう。気付くと容疑者の後ろに立っている主人公にケタケタと笑い転げていました。僕は怖かったですけどね。『サスペリアPART2』を彷彿する演出なんて地縛霊並みに恐怖でしたよ。

まあ、そんなわけで。
観賞後には日本橋に行きたくなる物語。
ミステリーとして捉えると物足りなさが先立つので(物語の構造が分かりやすいので)ヒューマンドラマと捉えたほうがが吉。人形焼き(もしくはたい焼き)片手に楽しむことをオススメします。

あー。
僕も食べたくなってきた。
浅草寺だと焼きたてが食べられますが、人形町にもあるのでしょうかね?聖地巡りに行こうかな。
こたつむり

こたつむり