ひば

MIU404のひばのレビュー・感想・評価

MIU404(2020年製作のドラマ)
5.0
この世は死刑執行そのものだって言葉を聞いたことがある。わたしたち地獄で生きるしかない。法が善悪を決めるけど法自体が時代環境に追い付けず悪になる場合もありうる。グループの共犯があった場合、事件が解決しても加害者全員をまっとうな道に導くことは難しい。そう簡単に人を救えると思うな。しかし手段を選ばない相手に適切な権力を公使し公正に戦うことで、そうやって守られてきた命もある。酷いことが起きる前に食い止める部隊が優しい魔法を期待した結果のエラーは胸迫るものがあった。
『アンナチュラル』の方が女性主人公だし好きかもだけど、『MIU404』はより描写が洗練されてる気がしました。野木さんは心底マチズモが嫌いで世の中を絶対に変えてやるという責任を担ってるんだな。関係の最高形態を"ファミリー"的概念に結びつけないことや、"男"にさせるために女をあてがうことをせず、「愚息ですが~」と言わない叩き上げ刑事とか些細なことも見逃せない。野木さんが言ってた誘拐された女子高生をエロく撮らせない配慮ってこれか~スカートで足が隠れてる上にさらに上から上着をかけて「怖かったね」と安心させる描写がよかった。『アンナチュラル』でも思ったんだけど喋り方がやわらかい。リアルで変に威圧感なく親近感あるっていうかフィクション感が薄い。『アンナチュラル』では女性が「~だねぇ」って喋ってるのが個人的にはすごい良かったんだよなぁ。『MIU404』は男性でも「見ろよ」じゃなくて「見てよ」とか「行くぞ」じゃなくて「行くよ」って言うところ多々ある。あと、どちらも正義を行い結果を残したからといって自ずと恋愛も成就する(トロフィーとして恋人が授与される)わけではない、という姿勢が好印象でした。大団円に不可解な恋人はいらない。また、助けた相手ではなく絶対に間に合うって信じた者同士がまじめに抱き合っててすごいなぁと思った。男同士のケアと救済じゃん。男同士のそういう描写しようとすると制作側の照れがさ、あるじゃん。でもそういうの一切感じない今までのフラストレーションの爆発でロマンチックにも見せてたね。

「教育機会の損失の結果。救えるものは救っていかないと」
「お前は弱いやつだと思ってたけど俺も弱いやつだった。偉そうに言葉を度に俺にそんな資格あるのか、俺こそが裁かれるべきなんじゃないか。お前の相棒が伊吹みたいなやつだったら生きてやり直せたのに」
の台詞が心に残りましたね。人の善意につけこみ正誤に関わらず情報が最短で共有され見えない人との見えない繋がりにより縛られ言葉の持つエネルギーが表されていただけに、久住くんは世界に1人だけだったら次の日には死んでしまう子なんだろうと。人の懐柔法しか知らんから。拳の強さだけで生き残れる世界を終わらせるということはこういう結果も招くんでしょうね
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