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伊藤くん A to Eのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

伊藤くん A to E(2017年製作のドラマ)
5.0
矢崎莉桜(木村文乃)、32歳。職業・脚本家。5年前に担当したドラマ「東京ドールハウス」は大ヒットを記録し、伝説の恋愛ドラマを書いた脚本家になりつつあったが、以降ヒット作を出せず、過去の栄光になんとかすがってプライドを保っている。 そんなある日、「東京ドールハウス」をネタに書いたエッセイ本「ヒロインみたいな恋をしよう! 」が発売され、トークショーを開催することに。
「ほんの少しの知識と勇気があれば、恋はきっと叶うんです」。恋愛について講演する莉桜の話を真剣に聞く女性たち。けれど莉桜の心の声は──「私が笑えば無条件に頷く、つまらない女たち……」毒舌だ。 かつて、公私ともにパートナーだったドラマプロデューサーの田村伸也(田中 圭)が、トークショーに参加した女性たちの恋愛相談企画を勝手にすすめていたことも気に入らない。 「くだらない……」と思いながらもアンケート用紙に目を通す。と、4人の女性たちに“ある共通点"があることに気づく。それは、彼女たちが相談している男の名前がみんな“伊藤"だったことだ。偶然? 莉桜は恋愛相談の当選者として、[A]島原智美(佐々木希)、[B]野瀬修子(志田未来)、[C]相田聡子(池田エライザ)、[D]神保実希(夏帆)に会って話を聞くことにする。 彼女たちを振り回す男たちは、みな容姿端麗らしいが、自意識過剰で幼稚で無神経。聞くにつけ首をかしげたくなるほどの「痛男(いたお)」。こんな男のどこがいいのか。 ところが、4人の女性が振り回された「伊藤」は、莉桜が講師をするドラマ研究会の生徒で、莉桜と同じく4人の女性を題材にしたドラマ企画をプロデューサーの田中に提出する。
しかもその企画書には、莉桜が恋愛相談した4人の女性の他に5人目の女性のことが書かれていた。果たして「伊藤」の狙いは、何なのか?
柚木麻子の小説をドラマ化。
伊藤に振り回された4人の女性は、タイプは違っていても恋愛の中で剥き出しになる女性のイタさの面を具現化している。男性にぞんざいな扱いをされても、男性の言動を良い方に解釈して、今まで尽くした分の元を取るために執着してしまう。恋人が途切れたことがないリア充を装いながら、男性にちゃんと誕生日を祝ってもらったことがない。女性の友人の恋愛相談に乗りながら、男性と付き合ったことがない同性の友人を密かにさげずんでいる。男性と付き合ったことない女性は、男性が途切れたことがない同性の友人を羨ましく思いながら密かに軽蔑している。遊び人の男性と遊ぼうとしても、片思いしている男性がこっちを向けばそっちに向いてしまう。今の状況を不満に思っても今の自分は「仮の自分」と思って、周りのせいにして打破するために安心な場所から出られない。そんな女性のイタさが、志田未来や夏帆や木村文乃など演技派女優により描かれるのがよりリアルさを増している。
「伊藤」に振り回された4人の女性が何故か結果的に自分の課題に気付いて成長していき、4人の女性に恋愛相談を受けながら密かに軽蔑している莉桜が、「ドラマの脚本が制約のある業界のせいで上手く書けないせいにしている」自分のイタさが4人の女性のイタさと似ていることに気付いて苦悩して、スランプから抜け出そうと足掻くために「伊藤」と自ら向き合おうとする展開は、恋愛という裸の自分や自意識に向き合うことの中で自分の課題を見つけ成長していく女性の切実なドラマが軸にあり、女性ならイタイところを突かれながら楽しめる。
男性なら、「伊藤」の都合の良い女性にぞんざいな言動をする態度や片思いする女性に相手の都合を考えずどんどんアプローチするストーカーぶりにムカついたり、童貞を過剰にコンプレックスに感じて自分に才能や価値があると自意識過剰な勘違いぶりにイタイところを突かれながら、楽しめる。
また俺様なプロデューサーの田中圭などの個性的なキャラクターも、ドラマを盛り上げる。
ドラマのラストに、莉桜の前に登場する「伊藤」に更なる波乱を予感して映画版に続く。
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