かず

ミセス・アメリカ~時代に挑んだ女たち~のかずのレビュー・感想・評価

4.8
WOWOWオンデマンドでギリギリ観賞できた。
日本の女性蔑視観が世界に明るみになった今こそ、観るべき作品になってしまった。

1970年、合衆国憲法改正案の男女平等修正条項(ERA: Equal Rights Amendment)の各州の批准をめぐる反フェミニズム運動(ERA反対派)の旗手、フィリス・シュラフリーをケイト・ブランシェット様が演じる。表情の絶妙な演技が本当に上手すぎて逆に怖い。

中絶合法化や就業の自由、男女間賃金格差の是正、離婚時の養育費の是正など、あらゆる格差の解消や選択肢の拡充を求めるERA賛成派。
一方、ベトナム戦争の泥沼化で若者の多くが徴兵され,米ソ冷戦による核戦争の脅威が現実化した1970年代という時世特有の恐怖と不安を利用するERA反対派の主人公は、過剰に危機を煽る真偽不明の情報や存在しない判例(現在のフェイクニュース)を捲し立て自身の反フェミニズム論を展開する。

男女の平等だけでなく、ノンバイナリーの人々の制度的平等や人種問題も絡み、問題は非常に複雑だ。
トークニズムは初耳だった。

非既得権益者たちの連帯に胸が熱くなる一方で、ERA賛成派・反対派どちらの女性も、結局は白人男性たちの道具でしかないことに気が滅入る。

ERA反対派の女性たちは、女性は家で家事と子育てをすべきと唱えながら、反フェミニズム運動に参加することで次第にフェミニズムとしての意識が芽生え、矛盾を抱え葛藤するのが印象的。


なお、ERAの批准は1923年から現在進行形で争われている。本作を観ても数々の問題が1970年(50年前)から殆ど解決していないことには驚愕せざるをえない。
最後の字幕で懸念されている批准期限については、上院でも超党派で期限撤廃とする共同決議がなされたらしく一安心。→https://www.rawstory.com/equal-rights-amendment/


・男女平等権憲法修正案
https://kotobank.jp/word/男女平等権憲法修正案-169419

https://www.google.co.jp/amp/s/www.tokyo-np.co.jp/amp/article/26266
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