えぬ

時をかける愛のえぬのレビュー・感想・評価

時をかける愛(2018年製作のドラマ)
4.5
本当に面白くていいドラマなので、まだ見てない方には花丸つけてお勧めしたい。台湾ドラマ史上最高傑作というのもダテじゃなかった、本当に。

ネタばれなしで見た方がいいという先人たちのありがたいアドバイスに従って、事前情報ゼロから視聴スタート(内容をわかりやすく整理整頓してくれている親切な解説サイトなんかもあるけど、結局ネタばれなしでは説明が難しいらしく)。

かなり複雑で時系列を追っていくのが結構大変なので、初回視聴時はがんばって集中力駆使して「置いていかれないようにしなければ!」と肩に力入りすぎて、楽しむという感じでは見られず、見終わった後はただただ疲労感でいっぱいに。だけど、だいたいの流れ(&登場人物たち)を把握して、いい感じに詳細を忘れた頃にもう一度見たらすごく楽しめた。これ、一回で余すところなく理解出来て、そのまんま100%楽しめた方を心から尊敬します。2回目の方がはるかに面白く見られたので(むしろ1回目では真の面白さがわかってなかったと2回目の視聴で思い知らされた)。


何より主要キャストがすごく魅力的。時系列追うのがやっとでストーリーの方の理解が追い付かなかった1回目の視聴でも途中脱落しなかった(する気にもならなかった)のは、主人公3人がとにかく良くて大好きだったからなのと、南国情緒一歩手前みたいな田園風景の生命力すら強そうな緑がまぶしい美しい台南という舞台が自分にはすごく新鮮だったから。気温も湿度も高そうで酸素たっぷり含んでそうな濃ゆい空気の中に、若い情熱溢れる彼らのキラキラした青春の輝きと彼らの友情との間で交差する思いが溶け込んでて、たまらなく魅力的だった。明るい日差しで水面の光るのどかな田園風景をスクーターで駆け抜けるとか、ただ眺めてるだけでもわくわくした気分になれるからすごい。

数奇な偶然によって絶対に出会うはずのない人と運命の出会いを果たし、どんな困難を乗り越えても(乗り越えられるという確証はどこにもない)どんなに月日を費やしても(その長さがハンパない)、そしてもしや自分自身は思いを遂げられない?と薄々感づきつつも…それでも止まることも引き返すこともできないと、一度愛した相手をどうしても忘れられず強く求め続けてしまう揺るぎない思いというものをここまでというぐらいに描き切ったドラマ・映画なんて出会った覚えがない。それをグレッグハンがこれ以上ないぐらいに魅力的に演じ、彼のファムファタールであるアリスクーもそれも納得の好人物で拭えないほど鮮烈な印象を残してしまったという組み合わせが素晴らしかった。アリスクーは一人二役だったけど、演じ分けがすさまじい。どこからどう見ても、まとう空気すら別人にしか見えないが、もう一人を装ったというまた別のパターンもすごく上手で驚いた。パトリックシーも、親友との友情や別人格な“相手”の間で気づけなかったり心が揺れるさまを、穏やかな中にも情熱をたたえる好人物として、グレッグハンとは一種対照的に演じている。

ただタイムスリップのストーリーの方で若干不満がなくもないというか、最後の最後が「いや、そこはそうじゃない方が…」とか「むしろこうだったらなあ」みたいな残念な感も。こういう現実離れした設定を用いる際、最後どう落とし前をつけるかはやはり重要で、そもそもが矛盾から始まっている以上全てのつじつま合わせをするのは非常に困難なことであるのだけど、ちょっとあっけない(自分にとって少々期待外れな)やり方なので、そこがもう少し良い方法であればもっと楽しめて満足感も大いに上昇した気がする。ただ、それまでがすごく良かったから生じてしまった類の不満でしかなく、惜しい・もったいないという気持ちが却って強まってしまったというか。

いろんな国でリメイク権を獲得したらしいけど、当初、韓国でリメイクするならその「むしろこうだったらなあ」という辺りを(韓国らしい情緒や思いやりなんかで)盛り上げながらうまくまとめて感動的に締めくくってくるんじゃないかという期待を持っていた。

が、韓国のキャスト見たらその期待もすっかりしぼんでしまい…(ごめんなさい)。このドラマはグレッグハン、アリスクー、パトリックシー3人のキャストの魅力とその演技力に負うところがかなり大きいと感じたので、ちょっとイメージが違いすぎて…。また、台南に代わる舞台はどこになるんだろう、さすがにソウルの中心街とかじゃないと思うのだけど、あれ以上魅力的な舞台ってどんなかなとか考えてしまった。あの青春の独特の湿度と熱量とキラキラな水面に照り返されるような鮮烈な眩しさをうまく描けるかな?

ちなみにOSTも良かった。スンションシーのオープニングタイトル「Someday or One Day」と「逃」という曲はどっちもすごくいい。台湾人だけれど、韓国生まれと知ってなんか納得の繊細で深い情感が沁みる。ウーバイの「Last Dance」も歌い手の癖が強いし最初はそんなにかな?ぐらいの印象だったけど、ドラマ見るたびに何度も聴いて歌詞の内容を知っていくうちにどんどん好きになって、今やすっかりお気に入り(スルメソングかも)。
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