ESR

カリフェイトのESRのネタバレレビュー・内容・結末

カリフェイト(2020年製作のドラマ)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

シリアに住み、生まれたばかりの娘の身を案じてISの一員である夫から逃れようと、以前住んでいたスウェーデンの恩師に助けを乞うペルビンの視点。
ペルビンとの連絡役になり、ペルビンの出国とその過程で明らかになったテロの阻止に奮闘する公安警察のファティマの視点。
スウェーデンのムスリムの高校の生徒で、ISと繋がっている高校職員に勧誘され、シリアに向かおうとする少女たちと、それを食い止めようとする家族の視点。
それぞれ別のタイムラインで進行し、次第に交わっていく。

欧州からISへ合流する若者が具体的にどういうアプローチを受けているのかというのは以前から気になっていた。
彼らは、間違った方向に「woke」させて、自発的に学んで、自分自身でシリアに行くことを選んだと思わせる。
しかも、社会に不満を持っていたり、家庭環境が良くなかったり、前科持ちだったりといった人をしっかり吟味している。
また、父親がスレのヒジャブを取り上げたシーンに顕著だが、イスラムを忌避する風潮があるために、彼女たちは本来的な意味のイスラム教を知らず、過激派の主張するものとの違いに気づけない。
ISは急速に力を失ったが、地理的な国境を持たず、ネットを介して人々の内側に広がっていく彼らのような組織は、今後も現れるだろう。(当然IS勃興の一因となったアメリカ主導のイラク戦争のような外的要素も関わってくる)

リアリティのある描写の連続に圧倒されながらも、どこかでこれはドラマなのだから、それなりの結末に落ち着くと思っていた。
しかし、ラスト2話はあまりにも救いのない展開で言葉を失う。

自分のように後悔する人を増やしたくない一身で助けたリーシャに裏切られた形で命を落としたペルビン。
自爆テロのカウントダウンに入ったところで、それが大義でも何でもなく、騙されていただけだと知り、直後散っていったケリマ。
スレとリーシャそれぞれの背負っていくものの重さや、これからの人生を思わずにはいられない。
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