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ザ・ループ TALES FROM THE LOOPのpepeのレビュー・感想・評価

ザ・ループ TALES FROM THE LOOP(2020年製作のドラマ)
4.5
謎の地下施設「ループ」が備えられた街で人々が経験する非日常的な体験を描いた物語。昔ながらのSF的な設定、モチーフがエピソードに使われていて、物語の展開そのものが格別斬新だというほどではありません。

けれど、懐かしさと先進性を同時に感じる創造性の高いデザインの建造物やロボットが当たり前に(ふつうのディティールの建造物とともに)街にあり、同時に多様な変化を見せる空や、天を突く様に林立する針葉樹林、豊かな緑が広がる草原、などといった映像的な美しさが目を惹きつけ、この世界に引き込ませる魅力を感じさせます。

そして、他愛ない動機からありえない出来事を体験し、やるせないとしか言いようのない結果を招く登場人物たちの細やかな演技のリアリティが物語に説得力を持たせます。描かれているのは、家族の絆や親愛、恋愛、友情などといった身近なものです。そのありふれたただ人間たちのドラマが、「ループ」由縁なのかなんなのかわからない「なにか」に翻弄されていくさまは、ときに哀れで無情にも感じます。けれど、粛々と「異常性」を受け入れ、人生をせいいっぱいにらしく描いていく彼らが、次第にいとしくも感じてくるのです。

そういった、ありえなさとリアリティがさまざまな角度から絶妙なバランスで成立している、クオリティの高いSFドラマだと私は思いました。いつまでもこの世界に浸っていたいくらいでした。

ループとはなんなのか、謎の建造物の意味は、といったことは(少なくとも)ドラマ上では語られることはありません。そのわからなさ、説明のないこと、を含めて楽しめる人向きではあるかな、とは思います。
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